緑鮮やかな山々を望みながら、田植えを楽しみました

雪が残る山々を見渡す棚田で、田植えをする。

 休日農業講座「田んぼのイロハ」の田植え編が、2017年5月20−21日の週末、新潟県南魚沼市栃窪集落で、首都圏からの学生や親子連れなど21人が参加して開かれました。夏を思わせる日差しの中、はだしで田んぼに入り、苗を一つづつ植えていきました。集落にはウグイスなどの小鳥たちの声が響き、食卓には採れたての山菜が次々と登場。季節を堪能する週末でした。

 今年の田植えでは、新しい試みをしたいと、集落営農組織「とちくぼパノラマ農産」の笛木晶さんが大きな道具を紹介してくれました。過去10年間の田んぼのイロハでは、6角形の枠を転がして田んぼに印を付けてきたのですが、今年は大きなクマデのような道具が出てきました。横に長い棒に10本のツメが出ています。間隔は1尺1寸(33センチ)。いつもの30センチ間隔より広くなりました。「除草作業が楽になると思うので、やってみようと」と晶さん。

1尺1寸(33センチ)幅の定規。

 応援にかけつけた集落の笛木良一さんが、縦方向に定規で線を引き、エコプラスの大前がもう一本の定規で横方法に線を引くと、33センチ角のマス目が出来。その線の交わる場所に、苗を植えていきました。

 遠くには、巻機山(1967m)や八海山(1778m)が見えます。山頂近くの沢にはまだ多くの雪が残り、ふもとは鮮やかな緑色。棚田が連続するイロハ田んぼ周辺は、タカの仲間のサシバが悠々と舞い、小鳥たちが鳴いています。車などの音もまったくないので、参加者同士も田んぼのあっちとこっちで話を交わしながら、田植えを進めました。

 例年よりわずか1割広げただけですが、1坪(3.3平方m)当たり30株しか植えないこともあって、作業はどんどん進み。休憩をはさんで2時間ほどで、およそ1反4畝(1,400平方m)の田植えを終えました。

木陰での軽トラ食堂。吹き抜ける風がさわやかでした。

 昼食は、田んぼの脇にある木陰で、軽トラで運ばれてきたおにぎり。ネマガリタケや山ウドなどが入った汁、山ウドのきんぴら、ワラビのおひたし、キュウリとニンジンのかす漬けなど、地域ならではの料理も並んで、さわやかな風に吹かれてゆっくりした時間を過ごしました。

 田植えに先立って、20日には集落散策をしたり、稲づくりの座学をしたり、夜には地面に寝転がっての星空観察をしたりと、山里の暮らしを五感で体験しました。散策時には、上杉謙信が関東出兵の際に軍馬とともに行き来した「古道」も探索。林の中の古道の一部には雪が残っていて、その上を歩きながら空を覆う明るい新緑を見上げるというぜいたくな時間を持つこともできました。

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 参加者の多くは、自然との関係の素晴らしさや農山村の厳しい現状を肌で感じたという感想を多く残してくれました。
大学進学の前の1年を使って、英国から日本にボランティア活動で来ていた若者の一人は、「こうやって日本人は日本の文化を覚える。私は英国に戻ったら英国の農場でボランティアをしてみたい」とコメントしてくれました。

 イロハ田んぼは、無農薬栽培なので、これから稲が生長する8月までの間に、3回は手作業での除草作業が必要です。6月には田んぼのイロハの除草編が実施されます。

しっとりとした新緑の中、雪国の山菜を堪能

 雪がまだ残る新潟県南魚沼市栃窪集落で、2017年5月6日、山菜講座を開きました。首都圏から大学生や社会人9人が参加し、地元のベテランと一緒に小雨模様の中、集落周辺の野山を散策。次々と別の山菜を紹介してもらいながら一部を採取しました。昼食には手作りの地元山菜料理10数皿。山里の暮らしを堪能しました。

 

急な斜面を登りながら、次々に新しい種類の山菜が登場しました。

 この日は、寒冷前線の通過を伴った冷たい天気になり、時折雨がぱらつく展開となりました。
 講師は地元のベテラン笛木健作さん。最初に、毒草を教わりました。「マムシグサ」とも呼ばれるテンナンショウは、鉢植えにした状態で見せてもらいました。ニラと間違うことがあるスイセンは、道端のあちこちに生えていました。「まず、食べられない、危ないものを覚えるように」と健作さん。

様々な色の若い芽で、木々はそれぞれ微妙に違った緑色に包まれていました。
 標高500mの集落の背後は、急な斜面の間に棚田が連なっています。残っている雪のへりには、出て来たばかりの淡い黄色のフキノトウがびっしり。雌花雄花の違いも教わりました。林の中では、トリアシショウマやミツバアケビ。陽当たりのいい斜面にはコゴミ、ヤブカンゾウ、アザミ、オオイタドリ、アサツキ、池の中にはクレソン。次々に初めて聞く名前が出てきて、特に大学生たちはこんなにいっぱい食べれるものがあるなんて、とびっくりしていました。

 今年は雪どけが遅く、地元で珍重されるヤマウドはまだ芽がわずかに地面に出た状態。健作さんは「天候が悪くて残念だね」とつぶやいていましたが、参加者はコゴミなどでいっぱいになったレジ袋をぶら下げて、山歩きを続けました。雪面からは白いもやがわき上がり、ゆっくりと流れていきます。山の斜面は、淡い赤、黄、緑の若葉が萌え始め、所々にはヤマザクラが満開になっています。見事な光景の中で、散策はいつしか2時間にもなっていました。

豪華絢爛な山菜づくしの昼食
 昼食は、笛木くらさん手作りの山菜料理。ウドのきんぴら、ゴマあえ、ウドのハカマの酢漬け、キノメ(ミツバアケビ)の生卵かけ、コゴミのシーチキンきんぴら、フキノトウの酢漬けなど13皿。さらにウド、コゴミ、ウワミズザクラ、フキノトウなどの揚げたての天ぷらが、8回以上、大皿で登場。山菜を味わいつくしました。

 最後に、取ってきた山菜を大テーブルに広げて、毒草が混じっていないか、どれがおいしいか、などを健作さんに話してもらいました。

 参加したみなさんは、「最初はまったく見分けがつかなかったけれど、段々にどれが食べられるものかが見えるようになってきた」「お金を使わずに、こんなにおいしいものが食べられるなんて」「冬の雪は大変だけど、雪があるからおいしいものが食べられるんだなあ」「自分で採って自分で食べる。これが人間らしい暮らしなんだと思った」などと話していました。

 

「私の田んぼ」を南魚沼に持ちませんかー棚田オーナー2017募集

 ギフチョウが舞う素晴らしい環境に包まれた山里の棚田で、環境に配慮したコメづくりを応援する「棚田オーナー」を今年も募集します。無農薬、有機、天日乾燥という伝統的な田んぼのオーナー。豊かな生態系を守り、小さな集落を支え、最高級の塩沢コシヒカリを味わっていただきます。

 自分たちの最大の財産は、豊かな環境だ、と気付いた南魚沼市栃窪集落のみなさん。過疎高齢化に直面しながら山間集落の存続を図っています。都会のみなさんに、安全、安心のコメづくりを通じて、日々の食や暮らしを見直す機会を提供し、新たな形の都市と農村のつながりを育みたいと考えています。

見事に実ったオーナー田んぼ(16年10月18日撮影)
絶景の棚田での田植え作業。オーナーのみなさんにも参加いただけます(16年5月22日撮影)
 秋には市場にはまず出回ることがない最高級のお米をお届けします。オーナーには、今期4回開催予定の、休日農業講座「田んぼのイロハ」(各回の参加費1万円)が無料に。

【募集単位と金額】
 100平方メートル(1畝=いっせ)分、年額5万円。グループや学校、保育園などの団体での申込も可能です。

【内容】
 用意した絶景棚田のオーナーになって頂きます。稲の栽培は地元の集落営農組織「とちくぼパノラマ農産」が担当します。オーナーのみなさまはいつでも農作業に参加していただけます。収穫した新米を一口あたり玄米30kg相当(白米で約27kg)お送りします。

【特典】
・田んぼにお名前を表示します。田んぼ作業への参加がいつでも可能です。
・田んぼの様子についてメールでお知らせします。
・収穫した新米を玄米30kg(売価約38,000円)相当をお送りします。
・休日農業講座「田んぼのイロハ」への参加費1名分が無料。伝統的なコメづくりのノウハウを教わることができます。

【栽培方法】完全有機・無農薬・天日乾燥。
農薬は発芽前、育苗期を含め一切使用しません。新潟県の一般的な農家では田植え後も含めて18〜20成分の農薬を使っており、9~10成分で育てたコメは「5割減農薬米」と表示されます。パノラマオーナー米は「完全無農薬」のおコメです。

【プチオーナー】
年額1万円のプチオーナーも募集しています。
参加費年額1万円、田んぼにお名前を表示します。いつでも農作業に参加可能。田んぼの様子についてメールでお知らせします。秋に収穫した新米5kg(売価6,300円)相当をお送りします。「田んぼのイロハ」講座の参加費が2割引になります
【主催】有限会社とちくぼパノラマ農産
【運営】NPO法人エコプラスTAPPO南魚沼やまとくらしの学校:tappo@ecoplus.jp

【申込】

田んぼのイロハ、ことしも伝統の米づくりを学びます

絶景の中での田植え
 コシヒカリの本場、新潟県南魚沼市で有機無農薬天日乾燥という伝統的な稲作を学びます。
 命あふれる無農薬田んぼでカエルやトンボに触れながら、地域の持つ豊かさを体感しませんか?
 田植えから収穫祭までの全4回。1回ごとの参加も可能です。学生、家族連れ、海外からのみなさんなど、どなたでも大歓迎です!

【スケジュール】
 田植え 5月20日(土)~ 21日(日)
 田の草取り & あぜの草刈り 6月3日(土)~ 4日(日)=満員です
 稲刈り 9月30日(土)~ 10月1日(日)
 収穫祭 11月3日(祝)~ 4日(土)

 いずれも1日目の昼過ぎに現地集合、2日目の夕方3時頃現地解散です。実地作業、座学、集落の自然や生活を知る散策、集落のみなさんとの懇親会などを予定しています。

【参加費】10,000円(プログラム費、2日目昼食、保険料)学生半額、エコプラス会員2割引。小学生以下の子どもさんは保険料、昼食の実費のみいただきます。栃窪の集落営農組織「パノラマ農産」の棚田オーナーは、参加費実費のみ。
【場所】新潟県南魚沼市栃窪集落
    集合・解散時間に合わせて最寄りのJR上越線塩沢駅まで送迎いたします。
【宿泊】地元の温泉民宿 7,500 円(1泊2食、温泉付き)
【特典】秋に収穫したコメをおひとり2kg贈呈。

    <<田んぼのイロハ田植え編への申し込み書>>

雪国のまぶしい春を楽しむ「山菜講座」

 雪深い南魚沼は4月に入っても雪がまだ残り、その上で木々が鮮やかな黄緑色やピンクがかった芽を一斉にふき出しています。雪が溶けた場所では、フキノトウやコゴミなどが枯れ草の間から姿を現し、次々と山菜たちが登場してきます。5月に入れば山々は、新緑と花々で彩られます。

足元には食べられる野草が次々と登場

 そんな雪国の春を散策しつつ、山菜名人の案内で、さまざまな山菜を観察し、昼食には地元の特製「山菜ランチ」を楽しみます。毎回大好評です。

【日時】2017年5月6日(土)午前10時ごろから午後3時ごろまで
【場所】新潟県南魚沼市栃窪集落(現地集合・解散)

【内容】集落近くの野山を地元の講師の案内で散策し、山菜を採取。処理と調理方法を学びます。地元女性陣の山菜ランチ付き。

地元ならではの多彩な山菜料理

【参加費】5,000円(地元食材の昼食、実習費等込み)
*中学生以下の子どもは1,000円(昼食、保険料など)

【定員】15名程度(子ども同伴可)
*子ども同行の場合、講座中の子供の安全管理は保護者の方にお願いします。

【宿泊】大好評の栃窪集落にある温泉民宿「銀峰閣」はあいにく先約があり前泊、後泊は出来ません。エコプラスがお付き合いさせていただいている清水集落の民宿は可能性があります。ご希望の方は、お早めにお問い合わせください。

【申込】以下のフォームからお申し込み下さい。メール(tappo@ecoplus.jp)で同じ内容を送っていただいても結構です。

まぶしい光の中で雪をたっぷり楽しみました

晴天の元、豪快に滑り降りた斜面
 雪国の山里を舞台に雪を楽しむプログラムが、2017年3月28日から新潟県南魚沼市清水集落を舞台に繰り広げられました。小学生を対象にした2泊3日の合宿組と、小学生5年生から中学生を対象にした3泊4日のキャンプ組の双方に、計20人が参加。青空のもとで、2mもある雪で楽しみました。

 小学1、2年生を含む合宿組は、ほとんどの時間を雪遊びに使いました。

自分で作ったジャンプ台。ソリは見事に宙に浮きました。
 滞在させていただいた地元の公民館のすぐ裏の斜面を舞台に、遊びました。ソリで滑り降るだけではもの足らず、ジャンプ台を作ったり、雪合戦をしながら、きれいな雪を丸めて口に入れて水分補給をしたりと、自由自在に遊んでいました。
 約200m向こうの斜面にはニホンカモシカの親子連れと思われる3頭が登場し、双眼鏡や単眼鏡で観察する場面もありました。
 食事も自分たちで作り、片づけも、一緒に眠るという共同生活。小学1年生3人、2年生2人を含む11人は、ほとんどが包丁を使うのも初めて。とり鍋やけんちん汁にも挑戦しました。

雪の上で火を起こす。なかなか難しい。
 キャンプ組は、雪の上でのテント生活。トイレも雪に中に作り、雪でお尻をふく徹底した「雪ざんまい」暮らしでした。火をおこすのも雪の上。ペール缶などに通気孔を開けた道具を使い、木を燃やします。かまど全体が、自分の熱で雪の中に沈んでしまうので、下に、土台の太い木を置くのですが、バランスが悪いと、どんどん傾いてしまいます。2日目の朝食時にはうどんの鍋がひっくり返る時間も発生。「冷やしうどん」になりました。

 キャンプ組のハイライトは、豪快尻滑り。1時間半ほど雪の上をかんじきで歩き、標高900m近い山の稜線にまで上りました。そこから一気に尻滑り。高低差7−80mを一気に下ります。地元の山岳救助隊長を長年努めた小野塚高一さんに安全なコースを設定していただきました。当初は、こんな急斜面上れないと言っていた子どもたちも、滑り降りる豪快さを体験すると、何度も上っては滑り降りて楽しんでいました。

 天候に恵まれたため、はるか彼方まで白い山々が連続する光景が見られ、休憩時間には「すごい光景だなあ」とみんなで見とれました。

 合宿組もキャンプ組も、それぞれ雪をとことん楽しんだようで、「自分について分ったこと」として「そりのジャンプ台を完成させた」「寒さに強い」などをアンケートで上げていました。
 学んだこととしては「共同生活では仲間を思いやることが大切だと分った」「キャンプから家に戻っても、ゴミをできるだけ減らす工夫をしたい」などが上げられました。

民主主義を日々積み重ねよう!“Practice Democracy Everyday”

 1月21日の国際シンポジウムでの、ブロンウィン・ヘイワードさんの発言要旨です。やっと整理が出来たので掲載します。

シチズンシップ(市民の役割)
 日本やニュージーランドでは高齢化が大変深刻な問題になっています。しかし、世界人口の半分は25歳以下で、都市で育っています。どうやってこの若者たちに、市民としての役割を考えるように手助けできるか。それが私の関心事です。

若者が直面する4つの課題
①危機的な環境の変化
 2011年にニュージーランドのクライストチャーチで大きな地震が起きました。福島がそれに続き、大きな被害を出しました。自然のもつ急激な変動と、ゆっくりした変動の双方が、これからの世代を襲うことでしょう。実際にその悲劇に直面するのは、孫や子どもということになるでしょう。

②地域の弱体化
 企業が、有利な税制や雇用を求めて地球規模で簡単に移動する時代。その企業をどう引き止めようかと自治体や国々が苦悩しています。企業と地域社会の関係をどう築くか。グローバルな経済と地域の民主主義との関係の維持は、より難しくなろうとしています。

③社会的格差の拡大
 多くの国々での課題となっています。過去30年、ニュージーランドでの貧富の格差は,スウェーデンに次いで世界ではもっとも大きく広がってしまいました。
 人々は、不平等ということについて敏感になっています。

④不安定な雇用
 若者の仕事がない、あるいは不安定な雇用状況が広がっています。ユニセフと世界銀行による調査では、例えばチュニジアという国でいま13歳の若者が、今後10年の間に職に就けるかどうかは、この先10年の間、毎年650万の新しい職が生み出され続けなければならないということでした。私たちの社会、経済、そして環境は、どうやってそれを実現できるでしょうか。

 私たちは考え方を変え、世界的な視野から考えないといけなくなっているのです。同時に、私たちの世代が作り出した世界的な課題に対して若い世代が取り組むのを、どう支えることが出来るのか。高度につながりあい、都市化されデジタル化された世界の中で、市民になるということはどういうことなのか、その若い市民たちがつながりあうことをどう支援するかを考えねばなりません。

ヘイワードさんのSEEDSモデルのスライド

SEEDSモデル
 私は、シチズンシップや、ある場所に存在し,所属し、関わるということを考える「SEEDSモデル」を提案しています。

Social Agency(協働意識)
 個人として権威から離れ、自ら思い描くことが出来る。行動することが出来る。それが西洋における啓蒙思想にもつながっていく、個人が考え,行動するという世界です。問題点の一つは、最後には「私がこの国を再び偉大にする」というような権威主義的なリーダーに行き着いてしまうということです。
 私が推し進めたいのは、個人としてのAgency(行動意識)ではなく、社会的な行動意識です。いかに他の人々との連帯の中で、コミュニティの中で尊敬しあいながら、つながりあって行動できるか。ということです。難しいことです。みんな違っているからです。
 この例の一つです。私が住むクライストチャーチでは、2011年2月の大地震の後、学生たちはフェイスブックで仲間を募って町の片づけ作業を始めたのです。6月に二度目の大きな地震が起こった時には2万4千人が組織されていました。大きな変化のためにともに汗を流し,行動したのです。

Environmental Education(環境教育)
 単に気候変動や、水の循環や土壌の科学などについて知るだけでは十分ではないのです。その土地の物語を聞き,その場の歴史を知り、そこで友達と仲良くなり,その場をもっと理解し、そこで遊ぶことに自信を持ち、その場が好きになり,その一部になっていると感じることが必要なのです。
 ニュージーランドの先住民マオリには、スランガワエワエ(turangawaewae)という素敵な言葉があります。私が立つ場所という意味です。この土地を、そこにいる人々を、その歴史を、その自然環境を理解しており、自信を持っているということなのです。

Embedded Justice(場の正義)
 経済学者のアマルティア・センがいうところの正義です。人々の声に耳を傾け、その状況をしっかりと理解し、解決のための正しい道筋を考え、決断することを支援するということです。
 私たちはこれまでの歴史を背負い、過去のいくつもの戦争を経て、多くの犠牲があり、自分たちが考える正義があり、思い込みもあり、恐怖や愛、希望を持っています。その中で、どう正しい判断をしていくのかということを、子どもだけでなく大人に学んでもらうことが必要です。
 困難な時代には、社会を操作することはたやすいことです。だれか特別な人たちに、不正義や不公平さを押し付ければいいのです。壁を作れとか、あの島を孤立させてしまえとかいうのです。彼らが悪い、と。
 環境問題でも、問題を生み出した長い歴史を省みることなく公正な決断をするということはできないのが、実際なのです。この産業化の恩恵を受けてこなかった人々のことを考えないでいいのでしょうか。資源の配分、温暖化ガスの排出枠。

Decentered Democracy(あちこちにある民主主義)
 哲学者のアイリス・ヤングが語った民主主義の非中央化ということを考えなければならないと思います。ニューヨークでウォールストリートを占拠する抗議活動が世界に広がったのがその例です。自分の住む街で、あなたの街で、だれかの街で、どのように会話をするのか。個別の課題ではあっても、それはつながりあっているということです。たとえば今日、世界165カ国で女性たちが権威主義のトランプ大統領に対する講義活動をしています。それぞれの場所で、共有する課題について議論する。それが非中央化された民主主義です。

 3年か4年か5年かに1回だけ投票する民主主義とは違って、日々判断を積み重ねるということなのです。世界各地の思慮深い、排他的でない会話をつなげる民主主義なのです。自分の声が届いていると感じてもらえるように進める。どのように他人の意見を聞くかということにもっと力を注ぐ必要があると思います。
 思いやりをもって地域の会話を聞き、それをつなぐということをどう教え、考えるかは、とても大事なことになってきていると思います。

Self-transcendence(自己超越)
 西洋では個人主義が強調されます。しかし私は、子どもたちはこういう課題を前にして決してひとりでいるのではない、かれらはもっと大きな社会の一部である、そう理解してもらうために、どうすればいいかと考えています。自己超越という概念です。今の自分を超えるより大きなものとの一体感のことです。宗教やあるいは神秘的な体験、自然との一体感、地域や家族、種族との連帯感、長い歴史の一部であると感じることを通して実現されるものです。若者たちが、自分自身の枠をはるかに超えて、何かより大きなものに支えられている、時間と空間と歴史の一部になっている、いまは無くなってしまった昔からの何者かの一部であり、これから登場してくる未来世代の一部であると感じることなのです。

エコロジカルシチズンシップ
 市民の役割、シチズンシップというものをもっと幅広く、毎日の暮らしを考えるものとして再定義する必要があると思います。エコロジカルシチズンシップ(生態系に配慮した市民の役割)と呼びたいと思います。私たちを取り巻くさまざまな要素、そして生態系に気を配るということです。
 これは、トランプ大統領の登場や英国のEU離脱という流れに対する即効薬ではありません。しかし長い時間をかけた、小さなことの積み重ねが大事なのだと思います。毎日の暮らしの中で民主主義の修練をどう積み重ねていくか、なのです。

「幸せ」とは何か、を石貨の島に探す・・・ヤップ島プログラム2017参加者募集

メンズハウスと宇賀神さんたち
 8月下旬の約2週間、高校生から大学生前後の若者たちを対象に、ミクロネシア連邦ヤップ島で、自然と深くつながった暮らしにお邪魔させてもらいます。人と自然、人と人、人と社会のつながりやかかわり方について考え、本当の豊かさを見つめ直すプログラム。
 スマホを置いて、旅に出ましょう!
 スイッチひとつで明かりがつき、指先だけで人とつきあう日々。そこからは見えない世界が広がります。
 自分の手で燃料を集め、乾かし、火を付け、調理し、目の前の人と真正面から向き合う。ひととしての基本に立ち返り、改めて生きる意味を感じ、考えます。

*プログラム概要
【日程】8月下旬の2週間程度(8月15日から27日を想定)
【対象】15~22歳程度の健康な男女。身体の障害、国籍は不問。新しいことに取り組み、自分の可能性にチャレンジする意欲を持つ人。
【参加費】26万円程度(渡航運賃、滞在費など。事前準備、個人装備、空港までの旅費、保険料を除く)
【定員】:12名程度(定員に達し次第締め切りとさせていただきます)
【プログラムの流れ】
 ・説明会 随時、エコプラス東京事務所(大阪、名古屋でも開催予定)
 ・顔見せ会 5月末…メンバーの顔合わせと準備などを説明します。
 ・事前キャンプ 6月初旬…神奈川県丹沢でヤップでの生活をイメージしながら1泊2日のキャンプを行います。
 ・ヤップ島へ出発!
 ・報告書の作成(9月)と報告会(11月頃)

【申し込み、問い合わせ】
 特定非営利活動法人ECOPLUS info@ecoclub.org
 03-5294-1441  03-5294-1442(fax)
 問い合わせをいただければ、これまでの報告書などをお送りします。

ヤップ島プログラム2017仮申込書

高野孝子の地球日記・・・3つの「賞」がやってきた

ヤップ島でコインランドリーからの排水を地元の人たちと調べる
 「テレビ観ました!」
 2月8日夜の日テレ「笑ってコラえて!」の一つのコーナーで私が取り上げられたことで、職場やネット上で、海外在住を含む数多くの人たちから声をかけられたり、連絡をもらったりした。社員旅行の帰りの車の中でたまたま流れてびっくりした、というまったくの偶然によるものも多く、とても久しぶりに近況を聞けた人たちもいる。
 またまったく知らない人が、私のことを調べてネット上で書き込んでいたりもする。

 瞬間的なことかもしれないが、テレビの影響力を実感した。

 22年前の映像が再び取り上げられる機会となり、また足かけ3日間の自宅での取材に加え、ほぼ3週間にわたって昔の写真を探し、資料をスキャンし、落ち着いた振り返りではなかったが、たくさんの出来事や人々とのご縁をあらためて見直すことにつながった。一緒に北極を旅した、米国在住のウィル・スティーガーとも画面を通して話すことができた。
 番組では使われなかったが、小学1−2年生の時の作文やテストを母が取っておいてくれた。そこにいちいち赤ペンで優しい言葉を書き込んでくれていた青木先生にそのファイルを見せようと、番組からもらった「トロフィー」も一緒に、彼女が暮らすグループホームを訪れた。施設の職員さんたちが知るところとなって盛り上がり、なぜかホームに入所されている方々全員と記念写真を撮った。トロフィーが中心。人気番組なんだなあと実感(私はほとんどテレビを観ないので、知らなかった)。

 バラエティ番組なりに楽しい作りになっていて、私も笑いながら見ていたが、ディレクターによると柱は「冒険と教育」。ずっと学びの場に関わってきた私としてはありがたかった。

 1月から2月にかけて、周囲のみなさんに喜んでもらえることが重なった。
 一つは、2017年度春学期の早稲田大学ティーチングアワード。「優れた教育の実践」を評価するものだ。学部や教育センターごとに選ばれるが、私の授業が提供されるグローバルエデュケーションセンターでは、1200以上の授業がある。その中から選ばれた3人の一人であった。
 「世界が仕事場」という名前の、学生たちが自ら一歩踏み出すことを応援する授業で、時には私がその様子に感動させられる。学生たちも言ってくれるように、価値ある学びの場になったと思う。私の役目はコーディネートで、学生たち自身と外部からいらしてくださったゲストのみなさんと一緒に作った授業だった。留学センターの任期4年の最後に受賞できたこともうれしいことだった。

 そしてもう一つが、Japan Outdoor Leaders Award(ジャパンアウトドアリーダーズアワード)特別賞。「山や川や海、田畑や森林など多様なアウトドアフィールドで、未来のための人づくりを実践する」人たちが対象だ。「記録」や「長い年月の活動」を評価する賞はあるが、変化する社会の中で広い視野と環境理解を持ち、人のために行動できる「普通の市民」を育てる人たちに焦点をあてる賞はあまりないことから、注目していた。「記録」のようなわかりやすい指標がないため、とても難しい試みだと思う。

 しかし自然の中で、他の人たちと共に生活し活動しながら得られる知識や理解、育まれる力や絆、価値観の問い直しの意味は、とてつもなく大きく、これからの社会、そして人類の生き残りのために重要だ。健全な社会を築くための市民を育む大切なことが、今は意図的に場を設定しなくてはなかなか得られない。自然の中での学びの場を作っている人たちに光をあてることで、その大切さが認識され、さらに多くの場所と人たちを対象に実現されるようになってもらえればと思う。

 これを書いているのはグアム空港。これからヤップ島へ向かう。空港ではたまたまそういう時間帯か、韓国の人たちのグループがとても多い。また無数の日本人が、顔や二の腕を日焼けでまっかにして、楽しそうにビールを飲んでいる。小さな子ども連れもいる。

 ヤップ島では、ある地区をモデルとして「持続可能な社会づくり」に向けた取り組みに関わっている。手始めは汚水と廃棄物。一緒に取り組むヤップの人たちが頼もしい。

 ヤップ島とのつきあいは丸25年となった。エコプラスや早稲田大学のプログラムを通じてヤップに滞在した人たちは300人を超える。私たちに大切なことを教え続けてくれたヤップに少しでも貢献したい。同じような気持ちを持つ、早大生千場くんが1年休学して現地滞在中。この持続可能性プロジェクトを支えてくれている。
 学びの場は学び合いの場。4月からは早大留学センターを離れ、同じく早大の文化構想学部に所属することになっている。今度は日本語での授業が中心だ。新しい取り組みを考え始めている。仕事の量を少しコントロールする必要はあるけれど、心新たに、周りに目を向けていきたいと思う。

古民家再生のドイツ人建築家ベンクスさんに「ふるさとづくり大賞」

 1月の国際シンポジウムで基調講演をしていただいたドイツ人建築家のカール・ベンクスさんが、総務省が行う「ふるさとづくり大賞」の総理大臣賞に決まり、2月4日に表彰式が行われました。

ベンクスさんからいただいた受賞のお知らせ

 カールさんはクリスティーナ夫人とともに、新潟県十日町市の山里に暮らしながら、日本の古民家の再生に情熱を注いできました。1月の国際シンポジウムでも、「よみがえる古民家」という発表をしていただいたばかりです。

 総理大臣賞ということで、3月にも安倍総理大臣から直接賞状が手渡されるとのこと。地道に、ひたむきに、日本の伝統である木造建築に向き合っていただいたことは、逆にこの血に住むものとして恥ずかしい気持ちもします。

 すでに50軒の古民家を再生し、さらに現在5つのプロジェクトが進行中。「100歳まで長生きして100件を再生します」というコメントがいただいたお手紙に書いてありました。

For the sustainable and peaceful future