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エコプラスの新型コロナウイルス対応ガイドライン

 エコプラスは、新型コロナウィルスの感染拡大に対応して、実施する体験プログラムに関するガイドラインを作成しました。

エコプラスの新型コロナウイルス対応ガイドライン
(2020年7月23日)

1 本ガイドラインについて

 内外の情報を参考に、エコプラスのミッションに基づいて検討。その時の世界、全国の感染状況と規制、事業実施地域の感染状況と規制を勘案して修正、対応していく。

2 感染防止のための基本的な考え方
  1. 安全と同時に学びの質を担保し、必要で合理性のある実効的な感染防止策を立てる。
  2. ①身体的距離の確保 ②マスクの着用 ③手洗いの実施 を基本的なガイドラインとし、総合的にリスクを判断する。参加者がバラバラに集まったものか、特定のグループ(家族単位や、大学ゼミなど)なのかによっても変わる。
    • 「身体的距離の確保(最低1m)に努める」、「マスクの着用(屋外の活動では必須ではない)」「手洗い・消毒の実行」をスタッフ、参加者とも励行。
  3. 清掃、消毒、換気
  4. 空間確保、少人数での活動など、互いの空間を確保。
  5. 持ち物、備品、消耗品などの道具を共有しないよう管理。
  6. 新型コロナウイルス感染症の主な感染経路である接触感染と飛沫感染のそれぞれについて、職員やボランティア、利用者等の動線や接触等を考慮したリスク評価を行い、そのリスクに応じた対策を検討する。
  7. ウィルスに関する最新の知見を常に把握するよう努める。
3 継続的な観察
  1. 参加者、スタッフに症状や異常がないか
  2. 具合の悪い人は不参加とするよう、促す
  3. 参加者、スタッフの具合が悪くなった場合の対応を計画
  4. 地域、スタッフ、家族とコミュニケーションが取れる
  5. 感染者が増えた場合に活動を中止する準備がある
4 具体的な感染防止対策

4−1 計画において

①三密を避けることを踏まえた事業計画を以下の項目に沿って作成する。

(実施場所) 実施団体の所在する行政の自粛要請や感染者の発生状況等の情報と実施場所の行政の自粛要請や感染者の発生状況等の情報を検討し、実施場所を決定する。屋内と屋外によりその内容及び対策を異なるものとする。

(参加者数) 対象年齢により、定員数を変える。また、幼児、小学生が対象である場合は小グループに分けることを工夫する。

(実施時間) 実施場所、時間帯や季節により、実施時間を検討する。

(移動手段) 公共交通機関を利用する場合は感染者の発生状況や一般客の利用状況を検討して利用を決定する。なお、利用の際には具体的な利用方法を検討する。また、貸切バス利用の場合は参加者のみの空間利用になるので事前の健康調査と定期的な換気、座席の利用等を工夫する。

(実施内容) 実施場所、参加者人数を加味して、3密状態を避ける内容を計画する。受け入れ施設の対策を確認する。

②事業規模の設定

原則、総数が最大50名を越えない数とする。(自然学校ガイドラインv.1)

③実施日までの感染予防対策案を作成する。項目は以下。

(参加者との連絡方法)連絡方法は対面方式を避け、電話やメール、HPでの申込方法等を活用する。

(参加者の健康状態の把握の方法)事前に具体的な健康状態の把握の方法を提示して実施日までに受け取る。

(参加者との連絡方法)連絡方法は対面方式を避け、電話やメール、HPでの申込方法等を活用する。

(感染者との接触の有無による参加取消の了承の事前承認)参加申込日にそれまでの感染者との接触情報を確認するとともに、実施日までに接触の疑いが確認された場合には、主催者側が参加の取消が可能であることの了承を得る。

(事前説明)キャンプ期間中にキャンプ参加者が従うべきルールやガイドラインを説明した文書を準備し配布する。(手洗い、消毒のタイミング、フィジカルディスタンスの取り方、どんな時に家にとどまるか、咳エチケット、他)

4−2 スクリーニング

(参加者)

  • 参加前14日間、自分の体温を記録。37度以上の(または平熱より1度上回る)熱が出た場合は参加辞退を依頼する。
  • 過去2週間に症状(平熱より1度上回る発熱、咳、息切れ、下痢、疲労、頭痛、筋肉痛、吐き気、味覚や嗅覚の喪失、喉の痛み、嘔吐など)があったかどうかのセルフチェックを行う。
  • 過去2週間以内に、国内または国外を旅行したか調査する。
  • 感染が広がっている地域に居住する場合は、過去2週間の会食や飲み会の有無や、不特定多数が参加するイベント参加の有無を調査する。
  • COVID-19の診断を受けた人、感染の疑いがあって検査した人、または隔離された人と濃厚接触をしたかを確認する。

(泊りがけのキャンプスタッフ)

  • キャンプ前2週間の健康状況把握。行動制限の検討。
  • 検査とスクリーニング

4−3 実施において

  1. 実施団体の所在地及び事業実施予定地における行政の自粛要請や感染者の発生状況等の情報確認
  2. 実施日におけるスタッフの健康状態の確認
  3. 受付場所の安全確保(消毒・消毒液の配置・予備マスクの用意)
  4. 当日の参加者の健康確認
  5. 実施場所の安全確保(消毒・消毒液の配置・予備マスクの用意)
  6. 事業実施中の三密対策の確保
  7. 使用備品の扱いに関する対応(消毒など)
  8. 使用する食器の扱いに関する対応
  9. 事業実施中に体調不良者または感染者が発生した場合の対応策の作成
  10. 事業終了時のスタッフ、参加者の健康状態の確認方法と帰宅後に感染が判明した場合の連絡依頼
  11. 事業実施中における中止判断基準の作成

宿泊活動の場合

  • 宿泊場所での三密状態の回避 (宿舎利用とテント利用)
  • 入浴に関する注意事項検討
  • 食事中、食事場所に関する注意事項検討
  •  着替え等の持ち物に関する注意事項検討

4−4 感染拡大防止に関するガイダンス

  • プログラム中 ― 感染拡大予防について、実際の運営の仕方についての説明。
  • 手洗いと消毒をするタイミング(キャンプ参加者と一般スタッフ)は以下
    • 食べ物を食べる前(例:食堂に入る時)
    • キャビン/テントに入る時
    • 病気かもしれない人と接触した後
    • 頻繁に触られる場所(手すり、ドアノブ、カウンターなど)に触れた後
    • トイレを利用した後
    • 共有のアイテムを使用した後
    • 咳、くしゃみ、鼻をかんだ後
    • 食材を準備する前後、および準備中
    • ごみに触れた後
    • 化学薬品を使い他の箇所を洗浄した後

4−5 講義などの利用施設(エコプラスの場合は、集落センターや区民会館など)

事業前― 換気設備の稼働確認。外気温が18−25度くらいであれば、全ての窓を数時間開ける。

当日― 窓を開けるなど、換気する。ドアノブ、蛇口など、使用する場所を消毒する。

4−6 宿泊を伴うプログラム

  • 宿泊施設、タープ、テントに入る際に、手指を石鹸で洗うか、アルコール消毒剤を利用。
  • 共通のアイテム(カップ、寝具、タオル、歯磨き粉など)や個人の所持品を仲間と共有しない。
  • キャンプ参加者は所持品を整理し、他のキャンプ参加者の所持品と分けて保管する。
  • 布団や寝袋で、隣との間は1.5m確保。宿の場合、一つの部屋で眠る人の数をできるだけ少なくする。頭部の位置を隣同士で逆にする。
  • 野外の場合、ソロテントか、タープの下での就寝を優先する。共有テントの場合、隣との間を1.5m程度確保できなければ、頭部の位置を逆にする。自分の頭と隣の間に一定の高さのものを置く。
  • 常に換気をする。可能であれば自然換気。

4−7 キャンプでの調理、食事

  • 共同調理中で近い距離の場合は、マスクをし、できるだけ向かい合って話さない。大声を出さない。
  • 調理や火起こしなどが始まる前に道具を消毒する。手指を頻繁によく洗う。共用備品を使用する前後に備品を洗浄・消毒し、手指を洗う。
  • 野外での食事を想定しているが、ある程度のフィジカル・ディスタンスの確保。
  • 共同の調味料容器などは事前に消毒する。利用する前後に手指を洗う。

4−8 装備などの消毒

  • 希釈した家庭用漂白剤。4リットルの 水に対し大さじ5杯(カップ1/3)の漂白剤、または1リットルの水に小さじ4杯の漂白剤を加える。
  • 頻繁に触れる表面は、可能な限り、使用前後に清掃と消毒を行う。

4−9 プログラム

  • · 体験型事業は小規模で実施。事業の内容や場所、やり方によって人数は変動する。日帰りの屋外のプログラムであれば、解説付きの場合は10人程度。個々の作業がメインの場合は20人程度まで。(話を聞くなどの際は、互いの距離が取れるように注意。)宿泊を伴うものは、やり方や環境によって幅がある。キャンプであれば、1グループ7人を基本として、広い空間にタープで眠り、アクティビティも分散するようであれば、2グループなど。
  • キャンプ参加者およびスタッフは、互いに2mの感覚が取れない場合、室内ではマスクを着用する。大きな声で説明するスタッフはマスクを着用する。
  • できるだけ屋外でアクティビティを行う。すべてのアクティビティにおいて、グループを少人数に保つ。
  • 生活班とスタッフは固定し、活動はいくつかの生活班が集まるやり方にする。
  • キャンプ参加者とスタッフが適切な手洗いを実践していることを確認する。
  • アクティビティの前後に、適切に手洗い(20秒間石けんと水で手を洗う)をする。またはアルコール消毒を行う。
  • 共有されるすべての備品および器具は使用するたびに確実に洗浄および消毒する必要がある。キャンプ期間中は可能であれば、参加者それぞれに各自専用の用具(例:ライフジャケット、アート用品など)を提供して、共有備品と用具の数を制限する。
  • 親、保護者および不要不急な訪問者の入場をできる限り制限する。

4−10 車での移動

  • 車での移動を伴う場合、乗車中はマスク着用。
  • 可能であれば、乗客間の距離を離し身体的距離を保つ。参加者のみの空間利用であれば、事前の健康調査と定期的な換気、座席の固定等を工夫する。
  • 車両に再乗車する場合、毎回同じ座席または割り当てられた座席に座る。
  • 降車する際は、すべての荷物を降ろしごみをすべて廃棄する。
5 事業実施後の対策
  1. 事業に使用した場所、備品等の清掃、消毒、交換
  2.  スタッフ、関係者の衣類の洗濯
6 必需品リスト
  • ハンドソープ
  • 手指消毒剤― 1日あたりキャンプ参加者やスタッフ1人につき 15ミリリットルの発注を予測。
  • 装備やテーブルなど、表面の消毒液と専用の布 ― 希釈した家庭用漂白剤。1リットルの水に小さじ4杯の漂白剤を加える。
  • 表面洗浄および消毒用ウェットティッシュ
  • ペーパータオル
  • 洗浄スプレーボトル
  • 体温計:医療スタッフ

エコプラスの活動予定について

 エコプラスは、今回の新型コロナウィルスの感染拡大に関して、予定していた各種プログラムを以下のように変更します。とりわけヤップ島プログラムに関しては、早くから参加申し込みをいただいていたのに、延期せざる得なくなり、誠に残念です。

 感染拡大は、世界規模で起きており、医療資源が限られる島国に外部からウィルスを持ち込むことを避けたいこと、また米国領であるグアムでの感染拡大にも留意してのことです。

 現場での活動は、しばらくの間、お休みしますが、南魚沼市栃窪集落での無農薬天日乾燥米の販売・予約による地域の応援や、ヤップ島での持続可能な社会づくり活動のリモート支援などは継続して展開します。ご協力をお願いします。

ヤップ島プログラム

 延期します(2021年2月実施=11月に実施を判断)
 理由:米国の渡航規制、日本再入国の規制、ヤップへの感染拡大のリスク、 ヤップで発症の場合の対応、国内での事前キャンプなどの実施の難しさなどから

田んぼのイロハ

 田植え(5月23-24日) プログラムとしてはなし。
  感染拡大の首都圏の人は、無症状感染者の可能性もあるので、参加はなし。 地元の希望者、一部の過去参加者による自主開催。

 草取り(5月30-31日) 延期
  田植え同様、無症状感染者による感染拡大防止のため。首都圏での感染が収束すれば、6月末から7月初めの実施を検討。

 稲刈り(9月26-27日)実施予定
  この時期には少しは首都圏での感染も収まっていることを期待。7月末に最終確定。

 お米の予約販売

 極端な少雪に見舞われた日本の山間地域は、スキー場を中心にした経済が、ウィルス騒ぎも加わって深刻な打撃を受けています。このため、早めではありますが、秋の収穫のお米の予約も始めます。お申し込みは、http://www.ecoplus.jp/2020/04/09/rice-sale-and-reservation/から

高野孝子の地球日記

新型ウィルスで、世界はどう変わる

閉じこもらずに外に出よう!

新潟県南魚沼市の坂戸山で

 2020 年4月8日、薄曇りの中に春の暖かな陽がさし、これを書く窓の外では桜が咲き始めている。その中を、小学生たちが列を作って登校している。おしゃべりしながら学校へ向かう中学生たちの姿も見える。ただし全員マスクをしている。

 新潟県南魚沼市では、3月からの休みを終えて、学校が通常に開始されている。子どもたちがグランドで動いている姿にほっとする。

 新コロナウィルスによって、日本を含む世界は3ヶ月前と変わった。国によって市民生活の制限は様々だが、日本では武漢から始まり、ニューヨークやイタリア北部などの厳しい外出制限や「封鎖」がよく取り上げられる。

 「私たちは一切外出できないの。お隣さんとの連絡も電話。外は春。外に出たい!あなたは大丈夫?」、とモスクワの友人から。

「マニラは大変。東京はまだロックダウンじゃないの?私は元気よ」とフィリピンから。

「家にこもって18日目ですが、あと一か月続きそう。毎日散歩+一日おきに筋トレしてますが、つい飲んでしまうので体重は増加中」とは3月末にカリフォルニアの友人。

 世界のあちこちで、「Stay at home, Be safe! 家にいて、感染しないで!」のかけ合いがされている。

 日本では罰則を伴う「禁止」ではないが、国や自治体、職場、あらゆるところで外出自粛が要請されている。そして今回の緊急事態宣言で、7都府県ではさらに強く要請されている。私が暮らす新潟県では、緊急事態宣言がされた7都府県との往来を避けるよう、強い要請が知事から出された。

 現在、ウィルス感染から身を守るためには、ウィルスに触れないこと、人との接触をできるだけ控えること。そのためによく使われるのが「不要不急の外出を控えて」の言い回しだ。

 コンサートや舞台が中止になり、図書館や博物館までも閉館される。音楽や芸術だけでなく、自分が暮らしを立てている仕事が、社会でどんな位置づけなのか、改めて考えた人たちは少なくないだろう。

 私が関わる野外・環境教育も同様だ。入試にないとか、もうけにつながらないなどと、「主流の思考」からは後回しにされがちだ。しかし人類が生き延びるために欠かせない基盤を提供するものであり、環境危機に直面する今こそ大事な分野だと、自信と危機感を持って取り組んでいる。野外・環境教育をしっかり経た人たちは、災害時や非常時に強い。物理的に必要なものを取り出す知識と技術があるということだけでなく、シンプルに暮らすマインドセットに切り替えることができるからだ。それには工夫する力や逆境を楽しむ力も含まれる。

 コロナウィルスの感染が広がり、物理的に人と会うことが制約される中、人と人が関わりあい、直接体験から学ぶことを大切にしているこの分野では当然、頭を抱えている。それでも仲間からは次のような動画が送られてきた。

 今回のような状況の中で、誰かと直接交わることの大切さを実感している人たちは多いのではないか。オンラインで話はできる。でも誰かと物理的に空間を共有し、話を交わしたり一緒に活動することは全く異なる体験だ。それは5感を刺激し、生きるために欠かせない喜びや感動をもたらす。

 家族との時間が増え、これまで家にいる時間が少なかった分、充実しているという声も寄せられている。私自身、放置していた家の片付けをしたり(少しだけ)、両親と会ったり、夫が作る手料理を楽しむ機会になっている。一方、限られたスペースに小さな子どもといる時間が増える分、苛立った親による暴力も増えているという。

 人間には、人と交わることも欠かせないし、一人のスペースも必要だ。急に誰とも会わない暮らしになり、かつ感染のリスクなどの恐怖もあり、心身に支障がある例も増えていると聞く。

 外出自粛要請は、人と人の接触による感染を防ぐため。だから、一人または家族で外に出て、散歩や山歩きなど、自然の中での活動をどんどんしてはどうか。緊急事態宣言がされた自治体や都市部に暮らしていても、家の周りをよく観察すれば、たくさんの小さな自然やおもしろい発見があるはずだ。これまでの研究で、自然の中で身を置くこと、体を動かすことの、身体上並びに精神的な健康効果は証明されている。閉じこもって別の病気になっては意味がない。芸術や音楽鑑賞も、人間の健康維持に必要だ。市中感染の状態にない限り、来場者が静かに回れる博物館や美術館は対策を取ってオープンすべきだと思う。

感染の後の世界

 「まだ、私たちは耐えなければなりません。しかし、必ずよりよい日がやってきます。私たちは仲間、家族ととともに過ごせるようになるはずです。私たちはまた会えるはずです」。英国エリザベス女王が5日の日曜日にコモンウェルスの人々に語りかけた。

 ウィルス感染がおさまった後の世界は、3ヶ月前と同じだろうか。

 私たちは3ヶ月前と同じように行動するだろうか。1年前にやったことと同じことを同じようにやるのだろうか。

 おそらく答えは「否」だろう。でも何が変わるのだろうか。

 大きな変動の時は、大きな変化の時でもある。自然界ではそうだ。個人でも、1ヶ月あることを続ければ、それ以前とは違う習慣を身につけることになる。2011年の原子力発電所の事故の後、多くの人たちにとって節電を続けるのが当たり前になったように。社会規模でもそうだろう。大きな苦しみや痛み、そして努力を伴うが、1995年の神戸大震災は、社会作りに市民の力が大きくなるきっかけとなった。2011年の東北大震災で、日本は大きく変わると言われたが、結局向いている方向は変化していないという人たちもいる。そしてこのコロナウィルスが招いている事態は、3.11以上だとする言説は多い。なぜならこれは、日本だけでなく、世界中、それも国際政治経済の中心にある国々に大きな影響を与えているからだ。

 この世界的感染爆発は、社会を変え、より良い未来を作るためのまたとない機会とする一方、すでにある不正義をさらにひどくするだけだとするものもある。カナダの作家ナオミ・クラインは、権力はこうした「非常事態」を自分の利益のために利用するものだと警告する。すでに見えていることもあり、私たちは注視し警戒しなくてはならない。

 多くの国々で、経済活動が抑えられた結果、交通量も大気汚染のレベルも大きく下がった。スタンフォード大学の研究者はPM2.5のレベルを解析し、この期間、中国だけを取っても5歳以下の1400人の子供と、51700人の70歳以上の人の命が救われたとした

 観光客が減った各地で、川に魚が戻り、鳥の声が聞こえるようになったという報道やSNSの書き込みがある。普段と違う時間の使い方を強いられながら見えてきたことと合わせて、ウィルスの後の暮らしに求めるものを考えるヒントがあるかもしれない。

 アメリカ人ジャーナリストのピーター・ベイカーはGuardianの記事(2020年3月31日)の中で、現状のパンデミックと環境危機について触れている。長い目で見れば、環境危機の方がずっと深刻で、人類を危機的状況におとしいれるとしながら、この二つはいくつかの点で似ているとしている。例えば、両者とも、世界中で通常でないレベルの協調が必要であること、人々の態度の変容が必要であること、どちらも長いこと確実に起きると言われながら各国政府が必要な対応をしてこなかったこと、マーケットの常識をひっくり返す強い政策が求められること。各国政府は、「環境危機」もパンデミック同様「非常事態」と認識して行動できるはずとする。

 確かに、世界各国の施策として、これまで考えられないようなことがCOVID-19を抑えるために行われ、かつ経済対策も初めてのことだらけだ。そんなことができるのであれば、環境危機に対してもこれまでにないレベルでできるはずだ。

 一方で、この非常事態を口実に、アメリカではパンデミックと関連があれば企業が汚染規制に触れても罰しないなど、様々な環境保全の規制を取っ払おうとしている。中国では企業の環境アセスメントを見送るとしている。使い捨てプラスチックを推奨するキャペーンも一部で始まっているという。ハンガリーでは政府の権限が強化された。

十分な情報を

 首都圏を含む7都府県に緊急事態宣言が出された。ニュースでは、感染拡大が収束するかどうかはとにかく国民一人一人の自覚と行動変容であるという内容や、街から人が消えたという報道の一方で、それなりの数の人が動いていて実効性はあるのか、など論じられている。

 一番嫌なシナリオは、「要請」ではラチが開かないとして、政府がさらに私権を制限できるよう権限強化の拡大を図る法律へと動くことだ。これだけはやらせてはいけない。

 新型コロナウィルス感染に関しては、各国の様子からすでに多くが学べているにも関わらず、日本政府の言動は後手に見えたり、整合性がなかったり、理解できないことが多い。

 2月の中国の様子、欧米の「都市封鎖」や連日の報道から、私たちは不安をあおられ緊張することも多い。けれども状況はあらゆる場所で一律ではない。情報に踊らされずに根拠を求め、冷静に自分で考え行動することが大切だ。それには信頼に足る十分な情報がなくてならない。

 報道を見る限り、政府がどんな根拠で決めているのか、疑問が尽きない。なぜ各国のようなレベルの数のPCR検査ができないのだろう。韓国から検査薬やノウハウ含めて輸入できないのはなぜだろう。「非常事態」なのだ。政府が重大な情報を国民から隠したり、自分たちに都合の良いように操作することは、これまで何度もあった。政府や自治体が信頼できない限り、市民・国民は従えない。私たちが納得して「協力」できるよう、重要な情報や決定過程を明らかにしてほしい。

未知のウィルスはまた必ず登場する

 気候変動は人間の活動によって引き起こされたとする見方が現在は通説であるが、COVID-19のようなウィルスによって人間が病気になるのも、人間が生態系を破壊したことによると多くの科学者が指摘する。人類にとって未知なウィルスは無数に存在する。人間が生態系を破壊することで、病原菌は動物など元々宿っていたホストからリリースされ、近くに存在するようになった人間を新しいホストとするというのだ。

 近年のSARSやエボラ熱、鳥インフルエンザなど、近年の多くのウィルスが野生動物に起因する。それらも自然界への人間の干渉が、人間の健康リスクを高めているとする。つまり今回のような感染拡大は、人間の経済活動の隠されたコストだという。

 COVID-19を押さえ込むのが当面の課題だとしても、必ずまたパンデミックはあるので、長期的な視野に立ってあらゆる対策を講じておかなくはならないと科学者たちは指摘する。

 ウィルスは昔から人間とともにあり、人間はそれらと共存するだけの集団免疫を獲得して生き延びてきたとされる。生物学者の福岡伸一は、「ウイルスは私たち生命の不可避的な一部であるがゆえに、それを根絶したり撲滅したりすることはできない。私たちはこれまでも、これからもウイルスを受け入れ、共に動的平衡を生きていくしかない」と語る(朝日新聞20.04.06)。

 次のパンデミックや他の非常事態に備える長期的戦略の一つに、人のリジリエンスを高めるような体験的な教育は位置づけられるだろう。

 今回の感染はいつどうやって収まるのか。理屈では、全世界で集団免疫が獲得されるまで続く。それには数年かかると言われているので、ワクチンや治療薬が見つかる方が先かもしれない。

 私たちはしかし、いずれ動き出さなくてはならない。それはどんな世界、社会の中であろう。どうせならより良いものを目指し、その変化、変容の準備をしながら、今を進んでいきたい。

(2020年4月7日)