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ウンネさん(ダーレさんの奥さん)の話

小学校の先生をされているウンネさん
小学校の先生をされているウンネさん

小学校の先生をされている、奥さんのウンネさんからも、フリルフスリフがどう学校教育の中で行われているのか、話してくれました。

ノルウェーの義務教育は6歳からの10年間です。フリルフスリフ、つまり自然の暮らしは、体育の授業で扱います。指導要領でも、すべての児童がどのように自然の中で存在するのかを学ぶことが定められています。一日校外にでかけ、植物を植えたりして、学校に戻って来てから絵を描いたり、本やインターネットで調べたりします。義

ノルウェーの子どもたちは、雪の中で過ごす体験をするそうです。
ノルウェーの子どもたちは、雪の中で過ごす体験をするそうです。

務教育の間に1-3日自然で過ごすことも義務づけられています。秋や冬には、マイナス20度の中、森で一日過ごすこともします。生物、算数の時間を使うこともあります。

Q&A

ダーレさんの家
ダーレさんの家

参加者からの質問と、ダーレさんの答えです。
質問1 日本の中高生は勉強で忙しくて自然に触れる時間がありませんが、ノルウェーの中高生はフリルフスリフをするのでしょうか?

答え:ノルウェーでは、12-19歳に、雪の中を歩いたり、雪の中で過ごさなければならないとされています。14歳の時には、2日間雪洞で過ごす体験もします。倫理観の育成、自分が学ぶことに責任を持つことにつながります。

質問2 子どもの頃に自然体験がなくても、大人になってからでもいいのでしょうか?

フリルフスリフの例
フリルフスリフの例

答え:できます。自分の教えている学生の中には、パキスタンなどから来た学生もいますが、フリルフスリフをしています。もちろん、価値観なので、子どもの頃から親しむほうが簡単ですが。私のリサーチでは、犬がいるとフリルフスリフが実践しやすいようです。犬の散歩のためにどうしても外を歩かなくてはならないからです。娘のために犬を飼いましたが、責任感が芽生え、犬とのいい関係を築くようになりました。

質問3 日本では、学校教育でも社会教育でも、自然体験は有料のことが多いです。ノルウェーではどうですか。

答え:無料です。分析では、高学歴な親ほど自分の子どもにフリルフスリフをさせています。

質問4 スティテン宣言とは、具体的には何ですか。

答え:国際的なムーブメントをおこしたいと思っています。世界のいろいろな山に宣言文を置いておき、だれもが署名できるようにしたいです。政府に対し、自然と共に生きたいと政治家たちに伝えるための行動です。最近金融危機が起きていますが、これから起こることに比べたらとるに足りないものです。このままだと、私たちは将来大きなツケを払うことになるでしょう。ノルウェー人は、今消費しているエネルギーの10%を削減しなければいけないとされています。石油が出るので今は豊かですが、それではいけません。フリルフスリフが世界へのノルウェーの贈り物なら、日本には技術があります。技術で貢献できます。このムーブメントは、非暴力でなければなりません。2010年7月31日から8月1日に、スティテン山の下で国際会議を開きます。自然の中を歩いて、宣言にサインするというものです。

日本の上空を飛行機から眺めると、緑があるところはゴルフ場でした。そういった都市に近い場所の緑を子どもたちに返し、人々が行けるようにするというのはどうでしょう。私は、40年前に開発に反対する運動をして逮捕されそうになりましたが、最近、賞をもらいました。時代が変わって来ているのです。また、カメラ会社とタイアップして、子どもたちにカメラを持たせ、自然の写真を撮るようにするのもいいでしょう。子どもたちは、カメラを持つことが自然に入る動機になるのです。子ども向けの写真教室を開いて、美しいというのはどういうことかを教えることもできます。

トークセッション ダーレさんのお話

スライドを見せながら話すダーレさん
スライドを見せながら話すダーレさん

10月29日、ヴェルゲ・ダーレさんのトークセッションが行われ、17人の参加者が集まりました。きれいなノルウェーの光景のスライドを見せながら、わかりやすく話してくれました。トークの内容です。
ノルウェーは南北に細長く、北極圏にあります。北海道のような気候です。一年の半分はスキーができます。夏の気温は25度くらいです。

私の家は、築250年の小さく古い農家の建物です。オスロから学生たちが、山のことを学ぶためにやってきます。人間関係をどう構築するか、一緒に長い時間過ごすためです。

おいしいレバント料理の軽食を食べながら話を聞く参加者のみなさん
おいしいレバント料理の軽食を食べながら話を聞く参加者のみなさん

フリルフスリフというのは、英語でいえば”free air life”です。自然といい関係を築く、という意味です。

ノルウェーは日本と同じくらいの面積で、人口は500万人です。ノルウェーの人はほとんどが自然に近い暮らしをしていて、オスロに住んでいても、20分くらい行けば森や湖があります。

自然の中で暮らすこと、それが「モダン」です。自然に優しい暮らしをしなければいけない時代がもうすぐ来るからです。それは、新しい生き方なのです。

1、 2世代前まで、ノルウェーは貧しい国でした。農民たちは夏になると夏の小屋に家畜と移動し、家畜は新鮮な草を食べました。

そんな伝統的な建物も保全し利用していく必要があります。牛小屋としてかつて使われていた木造小屋を、学生のために私自身が内部をモダンに直しました。学生に私の情熱と努力を感じてほしいからです。学生に、新しい価値を提供しないといけません。自然は学びのための良い部屋であり、価値があります。トイレは、ノルウェーでは伝統的に自己内省の場所になったりしますが、私は一人用の図書館に改造しました。

ノルウェーは、海岸線の国でもあります。ノルウェー人は氷河期の後退に伴い、北上してきたのです。暖流が流れているので、冬でも海は凍らず、魚を捕れます。海沿いにも、私たちは小屋を持っています。

学生達は、これらの小屋に来て、一日自然の中で過ごし、夜はディスカッションをします。本物の質のいい環境の中にいることが大切です。

最近、「スティテン宣言」というものをまとめました。私たちは自然と共に生きる生き方がしたい、と働きかけていくものです。1966年にスティテン山のふもとに4人の登山家が集まり、テントを張って過ごしました。アルネ・ネスは、「エコフィロソフィー」(自然哲学)を打ち立て、インドのガンジーの思想から、”no way to peace” (平和こそ道であって、平和への道はない)と唱えました。今の地球規模の問題の根本は、人間の考え方にあるものです。エコフィロソフィーは、ノルウェーから世界への贈り物だとネスは言いました。

政治(エコポリティクス)、哲学(エコフィロソフィー)、教育(ペタゴギー)の3つが重なる部分がフリルフスリフです。哲学を学び、自然を学び、政治も包括する考え方が、フリルフスリフです。

東京ではできないと言われるかもしれませんが、日本でのフリルフスリフとは何か、みなさんで議論できるのではないでしょうか。

将来を考えると、ノルウェー人はもっとフリルフスリフを進めていくでしょう。変化も必要です。人とのよい関係、自然とのよい関係、文化とのよい関係、神とのよい関係、そして自分自身とのよい関係が質の高い暮らしにつながります。自分にとって大切なのは、自然にやさしい暮らし方です。自然に対する情熱は、一生持ち続けるものなので、人生の早いうちにフリルフスリフにふれることが大切です。世代を越えてつなげていくものです。

ノルウェーでは、すべての人に自然にアクセスする権利があります。ノルウェー人はもともと狩猟民族だったので野生人です。フリルフスリフと違うのはオートアクティビティ(動力を使う活動)です。装備や道具が必要で、日本にもあったような自然の中での暮らしの一部ではなく、活動として行います。

みなさんは、消費し続けることと、消費しない価値観と、どちらを選ぶでしょうか。

ベェルゲ・ダーレさん、ウンネさんのノルウェーの話

ベェルゲ・ダーレさん、ウンネさんご夫妻から、自然に親しむ暮らし、スキー、トロールなどの話を聞き、「自然」がアイデンティティであるというノルウェーの文化にふれました。

 ときどき真顔で冗談を言うダーレさん。集落の人も楽しんでいました。
ときどき真顔で冗談を言うダーレさん。集落の人も楽しんでいました。

11月1日ー2日に、休日農業講座「山の上のかあちゃんの畑と料理」の参加者として、来日中のノルウェースポーツ体育大学助教授ベェルゲ・ダーレさん、小学校教諭のウンネさんご夫妻が南魚沼市栃窪集落を訪れました。1日目の夜、集落の子どもから大人まで15人ほどが集まり、プログラム参加者も一緒に、地図やスライドを見ながらノルウェーの話を聞きました。

最初に地理、歴史、経済などノルウェーの国について簡単に説明があり、次に景色の写真や、ダーレさんが作った絵本をスライドで見せてもらいながら、ノルウェーの人が普段から自然に親しんでいることを教わりました。

また、ノルウェーの人は世代を問わずスキーが好きで、共通の体験であり話題なのだそうです。栃窪の人もスキーが得意な人が多く、この話でノルウェーに親近感を覚えたようでした。

 ウンネさんの話の後、子どもたちと「橋の下のトロール」の物語を実演するダーレさん。迫力満点です。
ウンネさんの話の後、子どもたちと「橋の下のトロール」の物語を実演するダーレさん。迫力満点です。

話の終わりに、奥さんのウンネさんが、「橋の下のトロール」の物語を聞かせてくれました。牧草の茂る丘に続く橋の下にトロールがいて、草を食べに渡ろうとするヤギを食べようとする物語です。トロールとは、ノルウェーの人が自然の中にいると考えている空想の生き物です。