大前 純一 のすべての投稿

自主企画:田んぼのイロハ草取り編

Weeding Workshop in an Organic Rice Paddy

 エコプラスは、6月20日の土曜日、27-28日の土日にかけて、南魚沼市栃窪集落で、休日農業講座「田んぼのイロハ」の草取り編を行いました。新型コロナウィルスの影響を考えて、例年の1泊2日ではなく、日帰りの自主参加企画としての実施。3日間でのべ16人が、アカショウビンやサシバといった珍しい鳥の声を聞き、羽化したばかりのアキアカネの美しさに見とれながら、無農薬田んぼで草取りを続けました。

ECOPLUS conducted workshops on weeding in our non-chemical rice paddy in the weekend of June 20 and 27-28 in Tochikubo village at Minamiuonuma, Niigata, Japan. In order to avoid the risks on COVID-19, the workshop, used to be conducted for two days staying in an inn in the village, was changed into one-day program. For the there days, in total 16 persons were gathered and enjoyed the work surrounded by the calls of Ruddy Kingfisher and Gray-faced buzzard.

 完全無農薬での稲作を15年にわたって続けている無農薬田んぼには、イヌビエやオモダカ、コナギといった雑草がびっしりと生え始めていました。なかでもイネそっくりのイヌビエは、背丈も同じぐらいに育って、素人目にはまったく見分けがつかないジャングル状態になっていました。

In those rice paddies, farmers have not been using chemicals for over 15 years. So weeds are also very healthy. Specially “Inu-Bie” or Japanese millet, is so similar to rice that it was so difficult to identify which is which in the field.

 地元のとちくぼパノラマ農産の笛木晶さんから、葉の付け根に細かなヒゲがあるのがイネ、ないのはヒエと教わり、目を凝らしての作業となりました。

Mr. FUEKI Akira, the chief of Tochikubo Panorama Farm taught us that rice has small fluffs surrounding the base of each leaf. So, we were concentrating our eyes very close to those plants before each weeding actions.

田車を押して縦方向の草を取る。
Using “Taguruma,” a special tool, weeds along the long side can be pulled out.

 田んぼは、以前に何度か田車という金属のツメがついた手押し式の除草機を動かしたので、縦方向の草は取れているのですが、田車が通らない横方法にはびっしりとヒエなどが生えている状態。

Some days before our works, farmers used special tool called “Taguruma,” which has metal rotating claws. So, weeds along the one side were already taken or less but another side was very congested with weeds.

直線方向はきれいだが、横方法に雑草が残る
直線方向はきれいだが、横方法に雑草が残る。Weeds between rice seedlings are still remained.

 いずれの日も、参加者のみなさんは腰をかがめて、稲株の間を埋める雑草をひたすら抜き取り続けました。根もしっかりと張っているために、指を泥の中に突き刺すようにして土ごと引っこ抜くのはなかなか大変でした。

Weeds are grown as same as rice, we need to use all fingers pushed deep into the mud then pull out the weeds with roots. Keeping the bottom very low in the paddy during the work for more than one hour was quite tough for all of us.

 参加者の何人もが「無農薬というイネの栽培に、こんな作業が必要とは思わなかった」とびっくり。「サッカーをずっとしてきたので体力には自信があります」といっていた男子大学生も、いやー腰がいたい、と声を上げるほどでした。

Many of participants from Tokyo area repeated that “I never imagined it needs such hard work to grow rice organiclally.” Some university students, once said “I was doing football fo long years so I am confident on my physical strangeness,” complained of back pain.

羽化した直後の透明なアキアカネ。A dragonfly, just emerged.

 草取りをしていると、羽化したトンボが次々と見つかり、中には羽化したばかりでガラス細工のような透明な個体も見つかり、無農薬田んぼなえらではの自然の豊かさを、みんなで再確認しました。

While weeding, we identified so many dragonflies were emerging on the leaves of young rice. Some are totally transparent like a glassworks. All of us recognized the richness of the nature in the organic environment.

新シリーズ ヤップでまかれた種たち

第1回:當銘朋恵さん

石垣島からヤップ、そして石垣島へ 島の暮らしから紡ぐ、自然と人と優しい社会

 地球体験チャレンジ「ヤップ島プログラム」がスタートして、約30年。これまでに、オブザーバーなども入れて400人以上の参加者がヤップの大地を踏みました。30年が経過した今、ヤップという共通の体験を持つ仲間たちは、その後の四半世紀をどう生き、そして今何と向き合っているのでしょうか。

 プログラムの30周年を迎えるにあたり、今回シリーズ連載「ヤップでまかれた種たち」をスタートしていきます。ここでは、参加者のその後のストーリーに迫りながら、あらためてヤップが持つ意味や価値を振り返るとともに、今後の私たちがどう生き、持続可能な社会づくりにどう貢献していくのかを考える機会を生み出していきたいと思います。

 第1回目のストーリーテラーは、1993年参加者の當銘朋恵さん(旧姓:宮良朋恵さん)。沖縄県石垣島で生を受け、島で育ち、今も石垣島で5児の母として暮らす朋恵さんに、ヤップでの経験はどんな影響を与えてきたのでしょうか。當銘さんが語る、自然と人がつながる生き方について、お話を聞かせていただきました。

1993年ヤップ島プログラム参加者の集合写真。中段右から3人目が朋恵さん。写真:陶山佳久

自然、伝統、文化が織りなされる日々を
過ごしながら

機を織っているときって、無心になれるんです。瞑想のように。自分の手元からものが生み出される喜びがあるんですよね。自分で糸を紡いで、仕立てて、染めて。この辺ではまだ豊年祭の着物などは家族がみんな仕立てるんですよ。麻を育てるところから始めて・・・

オンラインでインタビューに答えてくれた當銘朋恵さん
オンラインでインタビューに答えてくれた當銘朋恵さん

 1993年、ヤップ島プログラムに参加した當銘朋恵さん。石垣島で生を受けた朋恵さんは、現在地元の石垣島で5人の息子さんの子育てに励み、ご家族のパイナップル農園を手伝う傍ら、機織り、学童の支援、ネイチャーゲーム、星空のガイドなど多彩な生活を楽しんでいます。

 朋恵さんの言葉からは、琉球の頃からの文化や伝統、そして取り巻く自然の息吹が生活の中に染み入っている様が感じられます。「今は御嶽(ウタキ)に入る時に着る打ち掛けを織っています。神様のところに行くので着物をさっと羽織る。そういう村の伝統行事に参加していると、島の神様って優しいなって感じるんですよね。村の人たちや自然を見守ってくれていて。この島の大地から神様が生まれてきたんだなって、わかるんですよ」

 子供の頃からとにかく自然が好きだったと語る朋恵さん。「生き物を見ても、葉っぱを見ても、何を見ても楽しい。そこら中に宝物が落ちていて、世界中がキラキラ輝いているみたいな。何で身体が1つしかないんだろうって思っていました。」

 石垣の豊かな自然に触れ、愛しながら育った朋恵さんですが、その一方で葛藤も抱えていました。「でも、自然が好きすぎると、人間が嫌いになるんですよね(笑)。自然破壊とか環境問題とかが許せなくて。ここだと新空港や赤土の問題があって。雨が降ると山が削られて本当に海が真っ赤に染まって、血が流れているようで痛々しかった」

 世の中的にも環境問題への認識が高まる中で多感な時期を過ごし、高校、大学時代は暗くてつらかったといいます。人のためになる仕事、先生と医者と農業だけはやるまいと心に誓い、琉球大学で生物学を専攻しました。ヤップ島プログラムについて知ったのは、そんな学生時代でした。

石垣島からヤップへ

たまたま新聞を見た時に、プログラムの募集記事が載っていたんです。本当に小さな記事で。しかも締め切りが翌日。もともとアフリカに行くつもりで、アルバイトでお金を貯めていたんです。あれ、でもミクロネシアか・・・と

 明確な目的意識があったわけではなく、直感ですぐに電話をかけた朋恵さん。ヤップ島プログラムに参加する方の多くは、そんな偶発性で結ばれているのではないでしょうか。

 「ヤップは沖縄と似ているんですよね。植物の種類も近くて。でも石垣からグアム、ヤップと行くにつれて、同じ植物が巨大化していく。グンバイヒルガオとか知っています? 海辺にはえているのが、ヤップに行くとこんな大きな葉っぱになるんですよね」ヤップに初めて降り立った印象をそう語ります。

 「最初にしたのが、ココヤシのジュースを飲むことと、葉っぱでマットを編むこと。そのマットを珊瑚を敷き詰めた床に敷いて、蚊帳をつって、みんなでギュウギュウになって寝ました。それから川の上にトイレを自分たちでつくるんです。天然の水洗トイレですね。料理もみんなで取り組みました。薪を集めて、料理当番も決めて。だんだん用意していた食材がなくなってきて、最後の方はご飯にジャムをつけて食べたりして、非常にまずかったのを覚えています(笑)。それを見たヤップの人たちが、可愛そうと料理をつくって届けてくれて。向こうは青いバナナを食べるんです。ココヤシだったり、カニのおつゆだったり、シャコガイにレモンを絞ったり。美味しかったですね」

 みんなで自分たちの暮らしをつくっていく生活がとにかく楽しかったと言う朋恵さん。約30年前の様子が映像に浮かぶようにありありと語ってくれました。

ヤップの畑から学ぶ
「必要なものを取り出せる」生き方

 そして、10日間くらいの滞在の中で、その後の朋恵さんの人生観にも影響を与えるような大きな体験もありました。

 「2泊3日で、ロサさんという方のご自宅にホームステイをさせてもらったのを強く覚えています。ある時畑に連れて行ってもらったんです。ジャングルの中をひたすら歩く。そして、いきなり止まったんです。『ここが畑だよ』と。えー、ジャングルばかりで畑も何もないじゃん、と思ったのですが、よく見ると上から瓜のようなスネークビーンズがなっていたり、足元にかぼちゃやスイカがあったり・・・。衝撃的でしたね。なるほど、こういうつくり方があるんだ、森を伐採して、牧草地や畑にしなくても、自分たちが必要なものを自然の中から取り出せる。すごく豊かだなと。行く途中に自分で編んだ籠に野菜を山盛りにかついで帰ってきました」

 自然を切り拓くのではなく、自然と共に生きる暮らし。「自分たちはココヤシと魚があれば生きていける」という現地の方の言葉にも触れ、「こういう生き方ができるんだ。こういう人たちのためなら何かしたいな、何かできるんじゃないかな」と、これまで人間嫌いだった朋恵さんの心情にも変化が生まれました。「このときの体験が一番自分の中で効きました。ヤップに行っていなかったら、すごく嫌な人間になっていたかもしれない。日本に帰ってきたら、不思議と何もかもがありがたく感じられるようになって。ヤップって、その時よりも、後からじわじわ来るんですよね・・・」

 ヤップで環境に負荷を与えない生き方に感銘を受けた朋恵さんは、帰国後、人と自然の持続可能な農業に可能性を見出し、アメリカ、オーストラリアでパーマ・カルチャーを学び、インストラクターの資格を取得します。農業だけはやるまいと誓っていた朋恵さんの信条が、ヤップでの豊かな経験を経て、人と自然をつなぐ接点として農業を捉え直していく様に、場の学びがもつ力強さ、気づきや価値の大きさが感じられます。

みんな違って、みんないい

 その後、石垣に戻った朋恵さんは、結婚し、5人の男の子を授かりました。「自分なりに自然な子育てをしたかったんですよ。だから上の子は病院で産んだけど、下の4人は家で旦那に取り上げてもらって。ヤップの子供たちって3歳位から山刀ぶらさげて歩いているじゃないですか。あれを見ていたので、子供たちには1歳になる前から包丁を握らせたり、鋸やドライバーも自由に使わせて。裸で走り回って。周りの人たちからは色々と言われましたけど(笑)」

 子育てが少し落ち着いてきたころからは、星のガイドや、子供たちを相手にライフワークにしているネイチャーゲームにも取り組み始めました。ネイチャーゲームは、知識ではなく、五感で自然を感じることに本質があると語ります。「花を見た時に、これは何科の植物、という活字が頭に浮かんでくると花の本当の姿が見えてこないんです。美しい、きれい、面白い、そういった感覚を持ってもらうことが大切かなと。今は、石垣でもカエルを見たことがないっていう子もいるんですよね。マングローブを案内しているときに、この子たち自然の中に来るのが初めてなんだとショックを受けることもあります」

私は『みんな違って、みんないい』という言葉が大好きなんですけど、自然の中に行くとそれを当たり前のように感じられるんですよね

 「でも、社会を見た時に、この言葉の本当の意味を理解している人ってどれくらいいるんだろうって。学校では特に感じます。うちの子たちは、学校も草履で行っていたんですけど、先生に怒られて靴を履くようになった。なんだか苦しいなと。生き方とか仕事にももっと幅があっていいんじゃないかなと。自分だけで完結するんじゃなくて、家族がいて、社会があって、地球があって、色々なものとつながっている感覚をもてると、生きる力につながるんじゃないかな」

 子供たちには、島の文化や風土を身体に染み込ませてあげたいと言う朋恵さん。ヤップで満月の海に、筏を浮かべてみんなで泳いだ情景を思い浮かべながら、いつか子供たちにもそういう体験をさせたいなとの願いを語ります。

石垣から考えるアフター・コロナの世界

 そして時は過ぎ、ヤップ島プログラムへの参加から30年近い時間が経過しました。今、世界の状況に漏れず、石垣においても新型コロナウィルスの影響は色濃くあります。そうした今の環境をどのように捉えているのでしょうか。

 「新型コロナウィルスの影響で学校も休校になっているんですけど(5月26日現在)、私の周りでは、その良さを感じている人も多いんです。宿題に振り回されずにのんびりできますし。特に3月からゴールデンウィークまでは、石垣島は観光の繁忙期で、いつもは親も子供をほったらかしになるんですけど、今年はのどかにキャッチボールをしていたり。またこの時期は、卵を抱えたオオガニとか色々な生き物がどんどん道路に出てきて、それがタクシーやレンタカーにばんばん轢かれているのを見て心が痛むんですけど、そういうのもなくなってのどかな光景が戻ってきました。」

 本来の日常は、過密ではなくもう少し穏やかなものであるはずと話す朋恵さん。今回は、島の観光や生活のあり方を再考する機会にもなっているようです。

去年は人口5万人の島に148万人が訪れているんです

 「経済的にはありがたいんですけど、観光客が来るということは、水もエネルギーも使う。明らかにキャパをオーバーしてたんじゃないかな。コロナ前は格安の航空券で石垣島にも簡単に来られました。そうすると、ゆっくりと時間を楽しむというより自分たちの日常をそのまま島に持ち込んでしまうんですよ。飛行機の窓を閉めてスマホを見たり、悪気なくレンタカーですごいスピードで飛ばしてカエルに気づかず轢き殺したり、さっと島を回ってこの島はこんな島だからと言って帰ってしまう。私たちは、たくさんの人に島の素晴らしいところを見てほしいと思っています。だからこそ、入れる人の数にも限度を設けたりして、島に敬意を払ってもらえる人、島を大事に思ってくれる人に来てもらいたいんです」

 新型コロナウィルスの影響は、これまで限りなく手段と化していた私たちの移動のあり方に大きな負荷をもたらしました。奇しくもそのことが、今住んでいる地域でのゆとりのある生活や、移動することの意味、そして訪れる先の自然や文化へのレスペクトを考え直すことにつながる可能性を感じさせます。もしかしたら、石垣から遠く離れたヤップ島でも、30年前とは大きく変わって近代化された社会や村の暮らしが見つめ直されているかもしれません。朋恵さんは、人と自然、人と生き物、人とものとが心を通わせ、つながり、敬意をもつことで、もっと「優しい社会」がつくれるのではないかと語ります。

これからのECOPLUSへの願い

 たくさんの経験や学びを語ってくださった朋恵さん。最後に、まもなく30周年を迎えるヤップ島プログラムや、ECOPLUSへの願いを伺ってみました。

 「人間嫌いだった自分が人に目を向けられるようになって、何もかもがありがたいと思える感覚を1週間、10日間で身につけられたことは、生きる上で本当に大きかったです。私はあまり素直じゃない参加者だったかもしれないけど、人に与える影響って、企画される人の意図とは違うところでも育まれるのではないでしょうか。実際に体験する場を息長く持ち続けてくれていることはすごいなと思います。体験した人でないと通じない話ってありますしね。そういう思いを語り合える場やつながりをこれからも残し続けてほしいです

やっぱり種ですよね。種をまく仕事をしているんですよね、ECOPLUSって

 石垣からヤップを経て、また石垣へと戻ってきた1粒の種が、地元で自分らしい根を張り、人と自然をつなぎながら、新たな種や土壌を育んでいる、そんな生き方を感じさせてくれたストーリーテリングでした。

(聞き手:川口大輔=エコプラス理事、1999年ヤップ島プログラム参加)

無農薬田んぼで、命と食を考える・・・草取りを一緒にしませんか

 新型コロナウィルスの緊急事態宣言が緩和されたのを受けて、エコプラスは、6月下旬から7月初めにかけて、南魚沼市栃窪集落で、無農薬田んぼでの草取りをします。例年、休日農業講座「田んぼのイロハ」草取り編として広く募集して1泊2日で実施するのですが、今回は、日帰り形式で行います。午前9時から午後3時過ぎぐらいまでをめどに、田んぼに直接来ていただいて、作業をします。お弁当、飲み物、行動食など持参でお越し下さい。

Once cleared, the seedlings look like very relieved. 除草が終わると、稲の苗たちもよろこんでいるよう。

趣旨
 2,000m級の山々を望む絶景の棚田で、手作業での草取り作業をします。無農薬栽培には欠かせない草取り。除草剤が開発される半世紀前までは、延々と人々が続けてきた作業を通じて、農と食と暮らしの関係を体験的に学びます。新型コロナウィルスの大流行で改めて問われた、どう暮らすことが幸せなのか、という問いにも、向き合います。

実施予定日
 6月20日(土曜日)
 6月27日(土曜日)
 6月28日(日曜日)
 7月4日(土曜日)
 いずれも日帰り。午前9時現地集合。昼過ぎまでやって、午後3時には解散。

場所
 南魚沼市栃窪地区 イロハ田んぼ(栃窪集落から樺野沢・天野沢に下る市道沿い。集落の墓地のすぐ下)
 列車利用の方は、JR上越線塩沢駅下車。タクシーで栃窪集落と伝えてお越し下さい。電話(090-3214-7549=大前)をいただければ場所を案内します。

内容
 無農薬田んぼでの、草取り。小雨決行。お昼ご飯は各自持参。あぜで食べます。飲み物や休憩時のお菓子なども持参下さい。トイレは集落の施設をお借りします。

服装・持ち物
 泥で汚れていい服装でどうぞ。ブヨがいますので、防虫スプレーや虫よけネットなどご用意下さい。裸足で田んぼに入ると土の感触がじかに伝わるのでお勧め。ビーチサンダルなどがあると足を洗うのに便利です。梅雨時期です。上下に分かれた雨具も必ず持参下さい。お弁当、飲み物、マイカップ、行動食も必ず。集落にはコンビニはありません。

申し込み・問い合わせ
 メールで、お名前(複数の場合は同行者のお名前も)、携帯番号、到着予定時刻、活動予定時間(何時ごろまで、翌日可など)を記して、tappo@ecoplus.jpまでお送り下さい。当日は090-3214-7549(大前)まで。
定員
 各回20人をめどとします。

参加
 無料(保険には入りませんので、ケガの場合はご自身の保険でお願いします)。 
 野外での直接体験、食と農と暮らしの関係に関するプログラムなどを通じで、持続可能な社会への道筋を考えるエコプラスへの支援(1口3,000円)をいただければありがたいです。

新潟県内チームで、田植えを楽しむ

Rice Planting Workshop with Limited Local Participants.

 エコプラスは、2020年5月23日に、新潟県南魚沼市栃窪地区で、田植えプログラムを実施しました。例年は、休日農業講座「田んぼのイロハ」の一環として実施していますが、今年は新型コロナウィルスの影響で、新潟県内在住者による自主参加方式としました。社会人、大学生計9人が参加、集落のベテランの指導を受けながら、3時間余りで1枚の田んぼの田植えを終えました。

ECOPLUS conducted rice planting workshop on May 23, 2020, at Tochikubo village, Minamiuonuma, Niigata. Considering national emergency on COVID-19 situation, only Niigata locals joined the program although every year many participants from metropolitan area joined the program.

 この日は朝から快晴。標高500mの田んぼには、色を濃くし始めた魚沼盆地と、山頂付近に雪を抱えた2,000m級の山々のダイナミックな光景が広がりました。

It was gorgeous morning with nice view of snow covered mountains and fresh greens from the rice paddy.

 素足で田んぼに入ると、あたたまり始めた泥がやさしく足を包み込みます。六角と呼ばれる幅3mほどの木枠を転がして、田んぼに筋を付け、その交差する場所に、苗を植えていきます。

Total nine participants from university students to aged local ex-farmer stepped into the rice paddy with bare feet feeling warmed soft soil. We used old wooden framed to make marks on the soil so that young seedlings could be sit on each crossing section.

田植えの様子を早送りでどうぞ

「手で田植えをするは10数年ぶりだ」という、別の集落からきた70代の男性。「地元に住んでいるが、農家ではないので、田んぼに裸足で入るのは小学校以来」という50代男性。都会から戻ってきた若夫婦も「農のある暮らしをしたい」と、目を輝かせて、作業を続けました。

 昨冬の雪が地元の老人たちの記憶にないほどの少雪だったので、山からの雪どけ水に頼る傾斜地の田んぼでは、田植え時期の水不足が心配されましたが、春先の雨がちの天候のおかげか、かろうじて水は間に合って、代かきも何とか出来たという話も、地元の方から聞きました。

 植えた田んぼは、15年以上にわたって無農薬でコメ作りを続けてきた場所。田んぼには、カエルや小動物が無数にいます。

 休憩時間には、高校の生物の教師だった男性が、シマヘビを捕まえてきました。「しま模様は、最初は横方向にも入っていて、成長するにしたがって縦じまだけになっていく。これは生後1年ぐらい。まだ横しまが残っているでしょ」。女子大学生も実際にヘビに触って「すごい筋肉質」とびっくり。

 自宅にこもる日々が続いていた中、緊急事態宣言が解除されて初めての週末。自然の中で体を動かし、仲間と語りあう時間の大切さを共有できた一日でした。

 無農薬田んぼでの伝統的な稲作を通じて、農と暮らしを学ぶ「田んぼのイロハ」は、草取り、草刈り、そして稲刈りと続き、はざかけによる天日乾燥での仕上げへと進んでいきます。今後の募集情報は、またウェブサイトなどでお知らせします。

お米講座、始めます

「チャンネルECO+」の新シリーズ

 エコプラスは、新潟県南魚沼市で、農山村の自然と暮らしを題材にしたプログラムを展開しています。新型コロナウィルスの影響で、直接体験がなかなか難しいので、今回、「チャンネルECO+」で、お米の講座を始めることにしました。

 理事の大前が、自宅近くの小さな田んぼでご近所の指導を受けて行う、無農薬、人力中心の、伝統的なコメ作りを、種もみの準備から、動画でお伝えしていきます。

 何気なく、毎日食べているおコメ。それがどうやってつくられているか。私たちの先祖は、どうやってこのコメを作り続けてきたのか、細かな、そして結構くたびれる作業を重ねて、暮らしを組み立て、家族と地域を作り上げてきたかを、考えます。

 最初は、もみを選ぶ「塩水選(えんすいせん)」からです。

前年、よく育った株を選んで保存しておき、そのもみを使って苗を育てます。比重の重い、しっかりしたもみを選ぶ塩水選という作業から始めます。

2回目以降は以下の通りです。どんどん積み重なってしまうので、いずれ整理しますが、とりあえず、田植えの前までの作業を順次ご覧ください。

種もみは、病気を防ぐために薬剤で消毒することが一般的です。20年ほど前から、お湯で消毒する方法が開発され、広がっています。温湯(おんとう)消毒です。
苗代(なわしろ)作り。伝統的な「水苗代(水苗代)」に挑戦。
苗作りは、稲作の出発点。もみを苗代の上に振りまいていきます。
冬の間に固まってしまった土をひっくり返します。雪国なので、1mとか2mという雪の重さで土は締まります。前年はこの田んぼには作付けしなかったので、雑草だらけ。
冬の間、モグラたちが自由に作ったトンネルを防ぐ、あぜ塗りです。くたびれます。

自主企画:南魚沼市の無農薬田んぼで田植え(5月23日、24日)

首都圏以外、新潟界わいの方のみ、限定20人

 新型コロナウィルスの緊急事態宣言が一部緩和されたのを受けて、エコプラスは、5月23日(土曜日)と24日(日曜日)に、南魚沼市栃窪集落で、無農薬田んぼでの田植えをします。例年、休日農業講座「田んぼのイロハ」として首都圏などからも広く参加してもらうのですが、今回は、近隣地域の市民を対象に、自主参加・日帰り形式で行います。午前9時から午後3時過ぎぐらいまでをめどに、田んぼに直接来ていただいて、作業をします。お弁当、飲み物、行動食など持参でお越し下さい。

  • 趣旨
     巻機山を望む絶景の棚田で、自然をたっぷり感じながら、手作業での田植えをします。ウィルス対策での閉じこもりがちの日々でしたが、安全な屋外で体を動かし、同時に、この騒ぎで注目された「食」や「農」を体験を通じて見直します。自然や環境などさまざまな分野の方も加わる予定。
  • 集合時刻
     23日午前9時。23日に完了した場合は24日はなし、ですが、日曜にも残るような気がします。23日のみの参加も可。
  • 内容
     無農薬田んぼでの、手作業での田植え。小雨決行。お昼ご飯は各自持参。あぜで食べます。飲み物や休憩時のお菓子なども持参下さい。トイレは集落の施設をお借りします。泥で汚れていい服装でどうぞ。ブヨがいますので、防虫スプレーや虫よけネットなどご用意下さい。裸足で田んぼに入ると土の感触がじかに伝わるのでお勧め。ビーチサンダルなどがあると足を洗うのに便利です。
  • 連絡
     メールで、お名前(複数の場合は同行者のお名前も)、携帯番号、到着予定時刻、活動予定時間(何時ごろまで、翌日可など)を記して、tappo@ecoplus.jpまでお送り下さい。当日は090-3214-7549(大前)まで。
  • 定員
     20人をめどとします。
  • 参加
     無料(保険には入りませんので、ケガの場合はご自身の保険でお願いします)

「チャンネルECO+」始めます

 エコプラスは、この新型コロナウィルスの感染拡大の状況にあわせて、動画を使った情報発信を始めます。「チャンネルECO+」と名付けました。このウェブサイトの中で始めますが、近くYouTubeなどでも、広く発信をしていこうと思っています。

 内容は、エコプラスの多彩な理事たちを中心に、それぞれの専門の角度から、持続可能な社会づくりにつながる日本や世界各地の様子、それぞれの活動状況など。多彩な内容になると思います。

 最初のシリーズは、髙野孝子代表理事の世界の旅のお話からです。

コロナの時代・・・「私の田んぼ」を南魚沼に持ちませんかー棚田オーナー募集

  • こんなに小さかった苗
  • 晴れればこんな絶景が

 新型コロナウィルスの感染拡大で、自らの暮らしをどう組み立て直すのかが問われていると思います。エコプラスは10年以上にわたって活動させていただいてきた新潟県南魚沼市栃窪集落でのコメ作りを、今年もご一緒させてもらいます。

 ギフチョウが舞う素晴らしい環境に包まれた栃窪の棚田で、環境に配慮したコメづくりを応援する「棚田オーナー」制度。無農薬、有機、天日乾燥という伝統的な稲作を支えます。豊かな生態系と小さな集落を支え、ご自身には最高級の塩沢コシヒカリを味わっていただくプログラムです。

 秋には市場にはまず出回ることがない最高級のお米をお届けします。オーナーには、休日農業講座「田んぼのイロハ」(各回の参加費1万円)が無料に。今期は、新型コロナウィルスの関係で、田植えや草取りのプログラムが出来なくなっていますが、来期の田植え、草取りへの参加を受け入れます。

【募集単位と金額】
100平方メートル(1畝=いっせ)分、年額5万円。グループや学校、保育園などの団体での申込も可能です。

【内容】
 用意した絶景棚田のオーナーになって頂きます。稲の栽培は地元の集落営農組織「とちくぼパノラマ農産」が担当します。オーナーのみなさまはいつでも農作業に参加していただけます。収穫した新米を一口あたり玄米30kg相当(白米で約27kg)お送りします。

【特典】
・田んぼ作業への参加がいつでも可能です。
・田んぼの様子についてメールでお知らせします。
・収穫した新米を玄米30kg(売価約38,000円)相当をお送りします。
・休日農業講座「田んぼのイロハ」への参加費1名分が無料。伝統的なコメづくりのノウハウを教わることができます。

【栽培方法】完全有機・無農薬・天日乾燥。
 農薬は発芽前、育苗期を含め一切使用しません。新潟県の一般的な農家では田植え後も含めて18〜20成分の農薬を使っており、9~10成分で育てたコメは「5割減農薬米」と表示されます。パノラマオーナー米は「完全無農薬」のおコメです。

【プチオーナー】
年額1万円のプチオーナーも募集しています。
参加費年額1万円。いつでも農作業に参加可能。田んぼの様子についてメールでお知らせします。秋に収穫した新米5kg(売価6,300円)相当をお送りします。「田んぼのイロハ」講座の参加費が2割引になります
【主催】有限会社とちくぼパノラマ農産
【運営】NPO法人エコプラスTAPPO南魚沼やまとくらしの学校:tappo@ecoplus.jp

【申込】

エコプラスの活動予定について

 エコプラスは、今回の新型コロナウィルスの感染拡大に関して、予定していた各種プログラムを以下のように変更します。とりわけヤップ島プログラムに関しては、早くから参加申し込みをいただいていたのに、延期せざる得なくなり、誠に残念です。

 感染拡大は、世界規模で起きており、医療資源が限られる島国に外部からウィルスを持ち込むことを避けたいこと、また米国領であるグアムでの感染拡大にも留意してのことです。

 現場での活動は、しばらくの間、お休みしますが、南魚沼市栃窪集落での無農薬天日乾燥米の販売・予約による地域の応援や、ヤップ島での持続可能な社会づくり活動のリモート支援などは継続して展開します。ご協力をお願いします。

ヤップ島プログラム

 延期します(2021年2月実施=11月に実施を判断)
 理由:米国の渡航規制、日本再入国の規制、ヤップへの感染拡大のリスク、 ヤップで発症の場合の対応、国内での事前キャンプなどの実施の難しさなどから

田んぼのイロハ

 田植え(5月23-24日) プログラムとしてはなし。
  感染拡大の首都圏の人は、無症状感染者の可能性もあるので、参加はなし。 地元の希望者、一部の過去参加者による自主開催。

 草取り(5月30-31日) 延期
  田植え同様、無症状感染者による感染拡大防止のため。首都圏での感染が収束すれば、6月末から7月初めの実施を検討。

 稲刈り(9月26-27日)実施予定
  この時期には少しは首都圏での感染も収まっていることを期待。7月末に最終確定。

 お米の予約販売

 極端な少雪に見舞われた日本の山間地域は、スキー場を中心にした経済が、ウィルス騒ぎも加わって深刻な打撃を受けています。このため、早めではありますが、秋の収穫のお米の予約も始めます。お申し込みは、http://www.ecoplus.jp/2020/04/09/rice-sale-and-reservation/から

高野孝子の地球日記

新型ウィルスで、世界はどう変わる

閉じこもらずに外に出よう!

新潟県南魚沼市の坂戸山で

 2020 年4月8日、薄曇りの中に春の暖かな陽がさし、これを書く窓の外では桜が咲き始めている。その中を、小学生たちが列を作って登校している。おしゃべりしながら学校へ向かう中学生たちの姿も見える。ただし全員マスクをしている。

 新潟県南魚沼市では、3月からの休みを終えて、学校が通常に開始されている。子どもたちがグランドで動いている姿にほっとする。

 新コロナウィルスによって、日本を含む世界は3ヶ月前と変わった。国によって市民生活の制限は様々だが、日本では武漢から始まり、ニューヨークやイタリア北部などの厳しい外出制限や「封鎖」がよく取り上げられる。

 「私たちは一切外出できないの。お隣さんとの連絡も電話。外は春。外に出たい!あなたは大丈夫?」、とモスクワの友人から。

「マニラは大変。東京はまだロックダウンじゃないの?私は元気よ」とフィリピンから。

「家にこもって18日目ですが、あと一か月続きそう。毎日散歩+一日おきに筋トレしてますが、つい飲んでしまうので体重は増加中」とは3月末にカリフォルニアの友人。

 世界のあちこちで、「Stay at home, Be safe! 家にいて、感染しないで!」のかけ合いがされている。

 日本では罰則を伴う「禁止」ではないが、国や自治体、職場、あらゆるところで外出自粛が要請されている。そして今回の緊急事態宣言で、7都府県ではさらに強く要請されている。私が暮らす新潟県では、緊急事態宣言がされた7都府県との往来を避けるよう、強い要請が知事から出された。

 現在、ウィルス感染から身を守るためには、ウィルスに触れないこと、人との接触をできるだけ控えること。そのためによく使われるのが「不要不急の外出を控えて」の言い回しだ。

 コンサートや舞台が中止になり、図書館や博物館までも閉館される。音楽や芸術だけでなく、自分が暮らしを立てている仕事が、社会でどんな位置づけなのか、改めて考えた人たちは少なくないだろう。

 私が関わる野外・環境教育も同様だ。入試にないとか、もうけにつながらないなどと、「主流の思考」からは後回しにされがちだ。しかし人類が生き延びるために欠かせない基盤を提供するものであり、環境危機に直面する今こそ大事な分野だと、自信と危機感を持って取り組んでいる。野外・環境教育をしっかり経た人たちは、災害時や非常時に強い。物理的に必要なものを取り出す知識と技術があるということだけでなく、シンプルに暮らすマインドセットに切り替えることができるからだ。それには工夫する力や逆境を楽しむ力も含まれる。

 コロナウィルスの感染が広がり、物理的に人と会うことが制約される中、人と人が関わりあい、直接体験から学ぶことを大切にしているこの分野では当然、頭を抱えている。それでも仲間からは次のような動画が送られてきた。

 今回のような状況の中で、誰かと直接交わることの大切さを実感している人たちは多いのではないか。オンラインで話はできる。でも誰かと物理的に空間を共有し、話を交わしたり一緒に活動することは全く異なる体験だ。それは5感を刺激し、生きるために欠かせない喜びや感動をもたらす。

 家族との時間が増え、これまで家にいる時間が少なかった分、充実しているという声も寄せられている。私自身、放置していた家の片付けをしたり(少しだけ)、両親と会ったり、夫が作る手料理を楽しむ機会になっている。一方、限られたスペースに小さな子どもといる時間が増える分、苛立った親による暴力も増えているという。

 人間には、人と交わることも欠かせないし、一人のスペースも必要だ。急に誰とも会わない暮らしになり、かつ感染のリスクなどの恐怖もあり、心身に支障がある例も増えていると聞く。

 外出自粛要請は、人と人の接触による感染を防ぐため。だから、一人または家族で外に出て、散歩や山歩きなど、自然の中での活動をどんどんしてはどうか。緊急事態宣言がされた自治体や都市部に暮らしていても、家の周りをよく観察すれば、たくさんの小さな自然やおもしろい発見があるはずだ。これまでの研究で、自然の中で身を置くこと、体を動かすことの、身体上並びに精神的な健康効果は証明されている。閉じこもって別の病気になっては意味がない。芸術や音楽鑑賞も、人間の健康維持に必要だ。市中感染の状態にない限り、来場者が静かに回れる博物館や美術館は対策を取ってオープンすべきだと思う。

感染の後の世界

 「まだ、私たちは耐えなければなりません。しかし、必ずよりよい日がやってきます。私たちは仲間、家族ととともに過ごせるようになるはずです。私たちはまた会えるはずです」。英国エリザベス女王が5日の日曜日にコモンウェルスの人々に語りかけた。

 ウィルス感染がおさまった後の世界は、3ヶ月前と同じだろうか。

 私たちは3ヶ月前と同じように行動するだろうか。1年前にやったことと同じことを同じようにやるのだろうか。

 おそらく答えは「否」だろう。でも何が変わるのだろうか。

 大きな変動の時は、大きな変化の時でもある。自然界ではそうだ。個人でも、1ヶ月あることを続ければ、それ以前とは違う習慣を身につけることになる。2011年の原子力発電所の事故の後、多くの人たちにとって節電を続けるのが当たり前になったように。社会規模でもそうだろう。大きな苦しみや痛み、そして努力を伴うが、1995年の神戸大震災は、社会作りに市民の力が大きくなるきっかけとなった。2011年の東北大震災で、日本は大きく変わると言われたが、結局向いている方向は変化していないという人たちもいる。そしてこのコロナウィルスが招いている事態は、3.11以上だとする言説は多い。なぜならこれは、日本だけでなく、世界中、それも国際政治経済の中心にある国々に大きな影響を与えているからだ。

 この世界的感染爆発は、社会を変え、より良い未来を作るためのまたとない機会とする一方、すでにある不正義をさらにひどくするだけだとするものもある。カナダの作家ナオミ・クラインは、権力はこうした「非常事態」を自分の利益のために利用するものだと警告する。すでに見えていることもあり、私たちは注視し警戒しなくてはならない。

 多くの国々で、経済活動が抑えられた結果、交通量も大気汚染のレベルも大きく下がった。スタンフォード大学の研究者はPM2.5のレベルを解析し、この期間、中国だけを取っても5歳以下の1400人の子供と、51700人の70歳以上の人の命が救われたとした

 観光客が減った各地で、川に魚が戻り、鳥の声が聞こえるようになったという報道やSNSの書き込みがある。普段と違う時間の使い方を強いられながら見えてきたことと合わせて、ウィルスの後の暮らしに求めるものを考えるヒントがあるかもしれない。

 アメリカ人ジャーナリストのピーター・ベイカーはGuardianの記事(2020年3月31日)の中で、現状のパンデミックと環境危機について触れている。長い目で見れば、環境危機の方がずっと深刻で、人類を危機的状況におとしいれるとしながら、この二つはいくつかの点で似ているとしている。例えば、両者とも、世界中で通常でないレベルの協調が必要であること、人々の態度の変容が必要であること、どちらも長いこと確実に起きると言われながら各国政府が必要な対応をしてこなかったこと、マーケットの常識をひっくり返す強い政策が求められること。各国政府は、「環境危機」もパンデミック同様「非常事態」と認識して行動できるはずとする。

 確かに、世界各国の施策として、これまで考えられないようなことがCOVID-19を抑えるために行われ、かつ経済対策も初めてのことだらけだ。そんなことができるのであれば、環境危機に対してもこれまでにないレベルでできるはずだ。

 一方で、この非常事態を口実に、アメリカではパンデミックと関連があれば企業が汚染規制に触れても罰しないなど、様々な環境保全の規制を取っ払おうとしている。中国では企業の環境アセスメントを見送るとしている。使い捨てプラスチックを推奨するキャペーンも一部で始まっているという。ハンガリーでは政府の権限が強化された。

十分な情報を

 首都圏を含む7都府県に緊急事態宣言が出された。ニュースでは、感染拡大が収束するかどうかはとにかく国民一人一人の自覚と行動変容であるという内容や、街から人が消えたという報道の一方で、それなりの数の人が動いていて実効性はあるのか、など論じられている。

 一番嫌なシナリオは、「要請」ではラチが開かないとして、政府がさらに私権を制限できるよう権限強化の拡大を図る法律へと動くことだ。これだけはやらせてはいけない。

 新型コロナウィルス感染に関しては、各国の様子からすでに多くが学べているにも関わらず、日本政府の言動は後手に見えたり、整合性がなかったり、理解できないことが多い。

 2月の中国の様子、欧米の「都市封鎖」や連日の報道から、私たちは不安をあおられ緊張することも多い。けれども状況はあらゆる場所で一律ではない。情報に踊らされずに根拠を求め、冷静に自分で考え行動することが大切だ。それには信頼に足る十分な情報がなくてならない。

 報道を見る限り、政府がどんな根拠で決めているのか、疑問が尽きない。なぜ各国のようなレベルの数のPCR検査ができないのだろう。韓国から検査薬やノウハウ含めて輸入できないのはなぜだろう。「非常事態」なのだ。政府が重大な情報を国民から隠したり、自分たちに都合の良いように操作することは、これまで何度もあった。政府や自治体が信頼できない限り、市民・国民は従えない。私たちが納得して「協力」できるよう、重要な情報や決定過程を明らかにしてほしい。

未知のウィルスはまた必ず登場する

 気候変動は人間の活動によって引き起こされたとする見方が現在は通説であるが、COVID-19のようなウィルスによって人間が病気になるのも、人間が生態系を破壊したことによると多くの科学者が指摘する。人類にとって未知なウィルスは無数に存在する。人間が生態系を破壊することで、病原菌は動物など元々宿っていたホストからリリースされ、近くに存在するようになった人間を新しいホストとするというのだ。

 近年のSARSやエボラ熱、鳥インフルエンザなど、近年の多くのウィルスが野生動物に起因する。それらも自然界への人間の干渉が、人間の健康リスクを高めているとする。つまり今回のような感染拡大は、人間の経済活動の隠されたコストだという。

 COVID-19を押さえ込むのが当面の課題だとしても、必ずまたパンデミックはあるので、長期的な視野に立ってあらゆる対策を講じておかなくはならないと科学者たちは指摘する。

 ウィルスは昔から人間とともにあり、人間はそれらと共存するだけの集団免疫を獲得して生き延びてきたとされる。生物学者の福岡伸一は、「ウイルスは私たち生命の不可避的な一部であるがゆえに、それを根絶したり撲滅したりすることはできない。私たちはこれまでも、これからもウイルスを受け入れ、共に動的平衡を生きていくしかない」と語る(朝日新聞20.04.06)。

 次のパンデミックや他の非常事態に備える長期的戦略の一つに、人のリジリエンスを高めるような体験的な教育は位置づけられるだろう。

 今回の感染はいつどうやって収まるのか。理屈では、全世界で集団免疫が獲得されるまで続く。それには数年かかると言われているので、ワクチンや治療薬が見つかる方が先かもしれない。

 私たちはしかし、いずれ動き出さなくてはならない。それはどんな世界、社会の中であろう。どうせならより良いものを目指し、その変化、変容の準備をしながら、今を進んでいきたい。

(2020年4月7日)