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“Place-based Education\” Lecture – Ray Barnhadt 2

Alaska Native Education:Steps Toward Reciprocity

Historically, schools in rural Alaska have been largely alien institutions with an imported curriculum that gave little consideration to the unique knowledge and skills that already existed in the communities they served.
It wasn\’t until the middle of the last century that elementary schools were established in Native communities, and only 30 years ago that secondary schools became available in rural communities.
Before 1975, most village students had to leave their home community and attend a boarding school to obtain a high school education. So our task has been to open up a dialogue to foster a two-way exchange of ideas, knowledge and skills between the schools and the communities they serve, recognizing that each contains knowledge of value to the students.

A major contribution toward opening this dialogue was the work of Angayuqaq Oscar Kawagley, whose doctoral dissertation provided critical insights into the world view, ways of knowing and educational practices of his people, the Yupiaq of Southwest Alaska.

Central to Dr. Kawagley\’s thesis was the representation of a Yupiaq world view as made up of a dynamic relationship between the human, natural and spiritual realms that constitute the whole of Yupiaq existence. He argued that one cannot address the role of the human realm without taking into consideration our interdependency with the natural and spiritual worlds. In other words, we can\’t teach science or history apart from understanding how we as humans interact with the world around us.

This chart illustrates how we went about introducing changes into the educational systems at two levels.

First, we had to engage Native elders to better understand how the local knowledge systems functioned in ways that could be drawn upon to enhance the school curriculum (the initiatives along the upper stream).
Then we had to find ways to make room in the established state curriculum to incorporate the world view, knowledge and ways of knowing present in the communities.

The goal was to bring the two streams of knowledge together in a way that they could complement one another to broaden and deepen the educational experiences of the students.

As we worked with the elders, it soon became apparent that we had to go beyond the visible aspects of the local cultures that schools typically had been limited to, such as dancing, foods, story-telling or subsistence practices (the tip of the iceberg), and take into consideration the deeper, less visible knowledge that continues to be an important part of life in Native communities.

Some of these less tangible elements of local knowledge that offer a rich opportunity for students to engage in comparative study include weather forecasting, navigation skills, traditional medicines, measurement systems, language patterns, local technologies and survival skills.

Elders themselves have become important contributors to the process of documenting local knowledge, such as this book by Athabascan Elder, Howard Luke. Howard\’s book includes a detailed map of the traditional places of importance to the people who inhabited Interior Alaska long before the gold rush brought a new form of livelihood to the Tanana Valley.

Elders in each cultural region of Alaska have also contributed to the educational process in their communities by putting together a list of values that they consider as representative of who they are and how they interact with the world around them.

These values serve as an important guide for teachers and community members to socialize young people into their roles as future leaders and culture bearers in their communities.

This is another example of local values from the Yupik people in Southwest Alaska, with both a Yupik and English translation.

As Native people in Alaska began to put forward their own ideas of how schools might best contribute to the educational and cultural well-being of their children, it became apparent that the school curriculum that was outlined in the academic content standards prepared by the Alaska Department of Education did not provide sufficient guidance to produce a well-rounded education, particularly for Native students.To address this deficiency in the State system, Native people engaged in a two-year process to prepare their own version of a comprehensive outline of what students needed to learn to be full contributors to their families and communities. In 1998, the Alaska Department of Education adopted these \”Alaska Standards for Culturally Responsive Schools\” as an additional component of the State standards for schools.

アラスカ少数民族の「根っこ教育」報告書出来ました

OLYMPUS DIGITAL CAMERAエコプラスが、国際交流基金日米センターの助成を受け、アラスカの少数民族の教育者らを招いて行った連続講演会の報告書が出来ました。
エコプラスが、国際交流基金日米センターの助成を受け、アラスカの少数民族の教育者らを招いて行った「地域に根ざした教育を考える・・・アラスカ先住民族の自然観を元に」の報告書が出来ました。

458-l 2006年11月から12月にかけて、アラスカ大学教授のレイ・バーンハート氏や、チュピック民族教育家のダチュック(シシリア・マーツ)さんらを招いて、東京での講演会のほかに、静岡、新潟、北海道で行ったワークショップの内容を日英2カ国語でまとめました。

アラスカ州で、少数民族の文化と伝統を取り入れた教育システムが動き始めているのは日本ではあまり知られていません。全国統一の画一的なカリキュラムを、それぞれの民族独自の価値観の中で再構成した事例は、地域に根付いた教育のあり方として大きく注目されています。その流れを初めて日本で総合的に紹介した講演やワークショップの記録です。

A4版、44ページ。希望の方はエコプラス(info@ecoplus.jp)へ、手数料(送料込み)1部500円でお分けします。

「地域に根ざした教育」シシリア・マーツ(ダチュック)さん講演内容2

ほんの少しだけお話しさせて頂きましたが、こういうことは、先程のバーンハート先生の話の中に出てきた、あの「氷山」の一番下の方、ふもとに来るようなごく一部となるのです。私どもが進めている、このヤーベスカニヤラクプロジェクトには長老にも参加してもらっています。このユーヤラックの教えを読むと長老の目には涙が浮かんできます。

この学校区ではこのユーヤラックの内容をカリキュラムの基本として活用しております。そして今お見せしているポスターの状態で学校の教室にはり出されています。ですから、これを見ながら就業前の子どもたち(幼稚園1年生ぐらいの小さな子ども)でもこれを暗唱できるようになっています。

私どもが進めているこのプログラムはあくまでも、その集落の人々のための、集落の人々が参加するためのプログラムであって、外の人が来て教えるものではありません。自分達の集落の長老たちの参加を得ながら進めている教育プログラムです。そしてこのプログラムに参加した人たちが、自分達の子どもにこの内容を教える、そしてまた子どもたちの仲間へと、この教えがどんどん広がりつつあります。この教えを知った人たちは自分達が何者であるかを知り、それを大変誇りに思うようになりました。また、このプログラムに参加している長老、お年寄りは、大変な知識を持っているので、その知識を若い人たちや夫婦に教えて欲しいと依頼されたことが嬉しく大変喜んで教えてくれています。彼らが遣う言葉は、これも非常にレベルが高い言葉であり、多くの人たちが忘れてしまった、あるいは全く知らないような、そういう言葉を使って教えてくれます。

このプログラムを始めて数年になりますが、この間に参加してくれていた長老たちの半分が亡くなってしまいました。このような長老が亡くなるということは彼らの持っていた膨大な知識も彼らの命とともに無くなってしまうということです。本来、より多くの人が学ぶべき、教えてもらうべきであった、そういう知識が失われるということの深刻さを考えることが大切です。日本に来てから、新潟県南魚沼市の栃窪集落というところに行きました。ここでも土地の子どもたちがお年寄りと一緒に活動しました。子どもたちが、「本当にたくさん学ばなければいけないことがあるんだね」と言ってくれたことが大変嬉しかったです。

まだまだお話ししたいことはあるのですけれども、私からのお話はこれぐらいで終わりにしたいと思います。皆様もぜひお年寄りを大切になさってください。そして環境を大切になさって下さい。それが皆さん自身を大切にすることにつながると思います。

「地域に根ざした教育」シシリア・マーツ(ダチュック)さん講演内容1

シシリア・マーツ(ダチュック)氏
チュピック民族教育家
アラスカ大学教育学修士。アラスカ大学アラスカ先住民研究助教授を経て、1999年から「ヤーベスカニヤラク」プロジェクト推進委員。
アラスカ先住民研究の第一線で活躍し、先住民文化、言語、精神文化、異文化教育などの分野でも貢献。
*チュピックはユピックエスキモーと同じ民族

チュピック民族の教育観

お話を聞いていただく前に私が着ている衣装を見ていただきたいと思います。集落によって違いはありますが、これはアラスカ先住民の女性が着る「カスパック」という服です。もちろんこの他に先住民族には独特の様々な衣装があるのですが、今日は持ってきておりません。私の夫マイクが着ているのも「カスパック」と呼ばれる先住民の物です。男性用です。

私の名前「シシリア」というのは先住民ではない「外」の人からつけてもらった名前で、私の本来の名前、民族の名前は「ダチュック」です。学校に行って初めて私の名前が「シシリア」だということを知りました。日本でも同じようなことがあるかもしれませんが、現代のアラスカ先住民は自分たち本来の文化をそして本来の言葉を失いつつあります。成人した若い人たちは子どもたちを連れて村から出て行ってしまう。また集落に住んでいる人たちも西洋式の生活を身につけてしまっています。

大変深い文化的な知識を持っている村の長老たちは高齢で亡くなってしまう、あるいは、まだ生きている長老たちも、本来彼らの知恵を活用すべきである、地域社会あるいは学校でそれらの知識を活かすことなく暮らしています。

私の住んでいるチュピックの地域、チバック村では2人の長老に毎日必ず学校に出向いてもらい、教育のプロセスに関与するようにしてもらいました。このようにいくつかの学校では長老の知恵を学校で活用するようになってきています。

もう一つアラスカの私たちの生活の現状として申し上げたいのは、community‐地域社会‐の感覚を多くの人たちが失いつつあることです。本来の文化、言葉が急速に失われつつあるという、このような現状を踏まえて、ここ2,3年長老たちと何回もミーティングを重ねてきました。その結果、「ヤーベスカニヤラク」というプロジェクトを立ち上げることになりました。このヤーベスカニヤラクは、いろいろな意味を含んだ先住民の言葉です。その中から2つだけご紹介したいと思います。ユピック・チュピックの言葉でいろいろな意味があるうちの一つで、一つのレベルからより高いレベルへ行くという意味です。もう一つは、文化を学ぶことによって、本来自分が何者であるかを知るという意味です。このポスターは、「ユーヤラック」と言い、これを私たちの教育のカリキュラムの基本、土台として現在新しい教育プログラムを進めています。これは、教育学で修士課程にいる人たちが村の長老の助けを得て、このように書いてまとめたものです。これを英語で翻訳しようと試みたのですが、英語ではこの言葉が持つ本来の意味が十分に表現できないということが分かりました。この内容を説明すると3時間ぐらいかかり、また、ここに書かれている教えを実践するには一生かかるものです。

例えば、「qanruyutet」という言葉がありますが、この言葉だけでも、その意味するところを文字にしたら、図書館いっぱいになってしまう膨大な知識の量となります。情緒的なもの、精神的なもの、物理的なもの、またメンタル、精神的なもの、それら全てかつ、手に触ることができるものできないもの、全てが含まれます。今日はここに書かれている全ての教えを時間の関係で正しく説明できないので、いくつか具体的な例を挙げながら、ご理解いただきたいと思います。第三段落目のところですが、自然を大切にするという内容が書かれています。すなわち、ここで言っているのは、世の中全てのものには意識がある、魂があるということです。例えば、赤ちゃんでも、あるいは、アザラシでも、海でも、風でも、全てのものに意識がある、魂があるということです。

もう少し具体的な例をあげると、私たちが山や海辺、荒野を歩いて行ったときに、道に土に半分埋もれているような丸太が転がっていたとしましょう。その丸太を見て、私たちはそのような木にも意識があるのだと考えます。そして、その木は意識があるのだから疲れているだろう、すっかり湿ってしまって居心地が悪いだろうと考えてその木をひっくり返してあげるのです。このように転がっている木をひっくり返すという行為には、何か良い事がつながるようにという願いが込められています。それをすることで、この木が別の誰かの役に立つのではないか、と、ちょうど誰か病気の場合に病気が良くなるようにと願うような同じ気持ちになるのです。そのように転がって埋もれた木も、ひっくり返すことによって乾いてくる。そうすると、生存の為にその木を必要としている人に役立つかもしれません。

もう一つ、アザラシの例です。アザラシは皆さん良くご存知かと思います。先住民はアザラシを獲りますが、決して無駄にしないで、すっかり使い切るようにしています。アザラシの皮で着るものを作ることができます。バックを作ったり、あるいは、保管貯蔵するための袋を皮で作ることができます。肉は生きていくため、生存のため全て食べます。そして骨も、ゴミとして捨てることはしません。骨を捨ててはいけないと教えられています。アザラシの骨は全て池に持って行き、池に入れる。自然に還すのです。

一段落目の「Ilakulluta」という言葉は、いくつかの意味を持っています。その一つは、長老を大切にしなさいという意味です。私たちの文化では長老のために食事を作ってあげたり、家を掃除してあげたり、どこかに行く時には連れて行ってあげたりというように、長老を大切にします。私たちの文化の教えとして、長老というのは大変な知恵を持っている、長老を助けることで、彼らの知恵に助けられ、助けた人がその人生で成功ができると教えられているからです。

またこの言葉は、自然をうやまうということも示しています。自然に関しては自分たちの住んでいる環境を知ること、自分たちが住んでいる地域の動物を知ることが大切です。例えば動物の中でも、鳥たちに関する物語を子どもの頃から聞かされて私たちは学んでいきますが、すべてを語るのに5日間かかります。長い長い物語なので、さわりだけをご紹介します。この物語は、地域で一番小さな鳥が主人公です。この小さな鳥が伴侶を失ってしまい、別の伴侶を選ぶことになりました。そしたら、全ての他の鳥たちがこの鳥のもとにやって来た。非常に大きな鳥から非常に小さな鳥まで様々な鳥が訪ねて来た。この物語を聞きながら、私たちは全ての鳥の鳴き声や色、そしてその名前を覚えるのです。なぜこんなに長い物語になるかと言うと、私たちが住んでいる地域にはたくさんの鳥がいるからです。

「地域に根ざした教育」レイ・バーンハートさん講演内容3

生徒のための文化基準
これは、アラスカの全ての教育プログラムで義務づけられている27の文化基準の一つです。

「文化的に知識が豊かな生徒というのは自分のコミュニティの文化遺産や伝統にしっかりと根ざしている」

それぞれの文化基準に対して具体的な実践例が6つずつあります。それらはインターネットで見ることができます。

この文化基準に加えて、先住民族たちは教育制度の中の様々な要素において実施するための一連のガイドラインを制作しました。教師は何を知らなければいけないのか、学校で効果的に基準を実施するためにどんなことができるか、といったことです。これらが教師たちにどのように役に立っているかは、会場にいる妻キャロルに聞いて下さい。彼女は、フェアバンクスで小学校の教育プラグラムの責任者をつとめています。

その他にも、伝統的な子育て、親の役割に関する一連のガイドラインもあります。

教師の多くは他の地域から派遣されているので、地元の長老たちの役割、彼らが教育に貢献できるのかというのを、そういった外から来た教師たちにいかにわかってもらうのか特に懸念されました。この長老の女性ルイーズさんは、自分自身が受けたしつけについて話してくれました。このように、地元に伝わる知識を文化的に適切な方法で学校にとりこむ手助けをしてくれたのが長老たちです。ルイーズさんについては、シシリアさんが後で教育哲学についてお話しする時に、出てきます。

ユピックやチュピックというアラスカ南西部に住む人々は、子どもたちの教育について民族性に根ざした深い期待を表現します。

どのコミュニティにもその土地独自の知識が伝わっています。それを土台にして学校のカリキュラムを作ることができます。ここに載せているのは、地域と文化に根ざした、私たちが開発した教育のリソースの例です。生徒が学校で経験したことを、どのように学校の外の生活の中で活かしていくことができるのか、といったことが書かれています。

例えば、科学の授業では、アラスカの遠隔地のコミュニティであっても、コミュニティで実践されていないことを通して科学を教えることはほとんどありません。そりは摩擦の学習に使うことができます。地元に伝わる気象観察のスキルを衛星画像と比べて気象学を学ぶことができます。地元の言葉には、雪とか氷を表す実に様々な用語があり、物質の状態、昇華、エネルギーの伝達、熱力学なども学ぶことができます。

高校での数学の問題も地元の独自のテーマを使って作ることができます。

潮の満ち引きのパターン、季節の移りかわりといった地元の知識は、どのコミュニティにも豊かに存在しています。これらを使うことによって勉強が生き生きとしてきますし、教室の中では得られない経験をすることができます。

地元で採れる食用の植物、薬草、伝統的な治療法などに関する知識は多くの先住民族のコミュニティにとって生死を決める大事な事です。これらの地域には民族植物学という確立された分野があります。

教師たちが周りのコミュニティや環境の中にある知識を活用することができるように「文化的に責任のある科学プログラム」というハンドブックを作りました。このカリキュラムの教材や文化的な資料は教師たちが開発したものです。ウェブサイト上に、アラスカのどこからでも、日本からでも手に入れることができるようになっています。

これらのカリキュラムのリソースはこの10年間に蓄積されてきました。私たちはそれらを様々なテーマでまとめて文化に基づく枠組みを作りました。これらは今フェアバンクスの実験校で7年生から12年生のカリキュラムとして利用されています。エフィー・コックリーン・チャータースクールでは、1年を通じて四季の暦にわけ、学校が運営されています。全てのコースは3週間ずつの短期集中型プログラムに分割されているので、これ以外の時間は外のコミュニティや周りの環境の中で過ごすことができます。

これまで話してきた内容をまとめると、アラスカの河川敷や浜辺はとても有望な学習環境を提供しているということです。生徒たちが学問的、文化的教育の両方を達成できる環境です。地域や文化に根ざした教育を通して、生徒たちはグローバル化された世界においても自分自身の人生を形づくることができます。その一方で、彼らの生活を支えるコミュニティの環境知識を保持していくために必要なスキルを学ぶことができます。

教師たちは、文化を単なるカリキュラムとして教えるだけでなく、地元文化を世界に開かれた扉として教えるのです。

アラスカ先住民族知識ネットワークのウェッブサイトで、今日お話した情報を得ることができます。
www.ankn.uaf.edu

「地域に根ざした教育」レイ・バーンハートさん講演内容2

アラスカ先住民教育:相互関係へのステップ

歴史的にアラスカの地方の学校は、コミュニティに伝わる独特な知識や技能にはほとんど配慮しない、自分たちの住む土地とは異質の外から取り入れたカリキュラムを使っています。
先住民族のコミュニティに小学校ができたのは20世紀半ばのことです。地方のコミュニティに中学校ができたのはほんの30年前のことです。
1975年以前は、村の子どもたちが高等教育を受けるには住み慣れた土地を離れて寄宿舎に入らなければなりませんでした。そこで私たちは、学校とコミュニティの間でアイデア、知識、技能を交換しようと対話をはじめました。学校もコミュニティも共に生徒たちに対する価値の知識を持っているからです。

地域との対話を始めるにあたって大きな助けになったのは、アナヤカ・オスカー・カワグリーという人です。彼は博士論文で、自らの出身であるアラスカ南西部のユピック族の世界感、ものを理解するやり方、教育的な実践について詳しく述べています。

カワグリー博士は論文で、自然界と精神世界がユピックの存在を作り上げていると言っています。自然界や精神世界と人とのダイナミックな関係がユピックの世界観を形成していると言っています。

博士は、人間と自然界や精神世界との相互依存を考慮せずして人間世界の役割を考えることはできないと言っています。つまり、人が周囲の世界とどう交わるか理解せずに、科学や歴史を教えることはできないと言っているのです。

これは、二つのレベルでどのように教育システムを変えていったのか示しています。

まず、私たちは先住民族の長老たちに、どのようにして地域の知識体系を学校のカリキュラム向上のために活用できるのかを尋ねました。この作業がこの図の上の方です。

当時すでに確立されていた州のカリキュラムの中に地域社会に伝わる世界観、地域の事柄を知る方法をどう組み込むか考えました。そしてこの二つの知識の流れを統合して、それぞれが補いあい、生徒たちの学習体験がより広く、深まるようにしました。

長老たちと一緒に作業を進めていく中で一つ明らかになったことがあります。それは、地域文化の目に見える部分をカリキュラムに入れるだけでは不十分だということです。学校では、ダンス、食べもの、民話、生活手段などを教えます。それらは氷山の一角にすぎないということです。もっと深いあまり目につきにくい知識も、コミュニティでの暮らしには大切なのです。

このように形のない地域の知識、例えば、気象予報、ナビゲーションのスキル、伝統医学、物を測る技術、言葉、技術やサバイバルスキル、といったものを比較研究することで、生徒たちは地域の多くの知識を得られるのです。

地元の知識を文章にまとめる作業では、長老たちが非常に重要な役割を果たしました。例えば、アサバスカンの長老であるハワード・ルークが書いた本には、アラスカ内陸部に住む人にとって伝統的に重要な場所を記した地図が載っています。これらの場所はゴールドラッシュによってタナナバレーに新しい生活様式がもたらされるずっと以前の時代の場所です。

アラスカのそれぞれの文化地域に住む長老たちもそれぞれの教育制度に貢献してくれました。自分たちのアイデンティティや周りの世界との関わり方を象徴するような価値観をリストアップする作業に協力してくれました。

学校や、地域の人たちにとって、こういった価値観は、若者たちを将来の地域のリーダーや文化の担い手として導いていく際に非常に重要な役割を果たします。

これは、アラスカ南西部のユピックの人たちの価値観を示したものです。ユピック語と英語両方の翻訳で書いてあります。

こうしてアラスカの先住民族は、子どもたちに教育的、文化的な幸福を与えられる学校運営をいかにできるかアイディアを出し始めました。従来の学校のカリキュラムは、アラスカ州政府教育局が作った学習基準によって定められたので、これだけでは先住民族の生徒たちの総合的な教育には不十分であるということが明らかになってきました。州政府の制度の不備を是正するために先住民族の人は、生徒が家族や地域社会に貢献するには何を学ぶ必要があるのかを総合的にまとめる作業をスタートさせました。この作業は2年間かかっています。1998年に、州政府の学校基準に加えて新しい基準を策定しました。『文化的に責任のある学校のためのアラスカ基準』というものです。

「地域に根ざした教育」レイ・バーンハートさん講演内容1

レイ・バーンハートさん
レイ・バーンハートさん

レイ・バーンハート氏
アラスカ大学フェアバンクスキャンパス
多文化スタディ教授
1970年から、先住民教育の調査、研究に従事。多文化教育部長を務めた他、小規模高校プロジェクト、多文化研究センター、多地域間教育プログラム、アラスカ先住民知識ネットワークの立ち上げに関わる。

アラスカ先住民の知識体系

地域に根ざした環境教育は、アラスカでも日本でも、関心をもたれていると思っています。今日は、アラスカ先住民の子どもたちや地域のニーズにあわせて、10年間で教育プロジェクトがどのように発展していったかお話したいと思います。

この取り組みはアラスカ先住民族連盟という団体を通じて行いました。アラスカ大学フェアバンクス校とアラスカ州政府教育局が協力して米国国立科学財団の資金を使って行われました。

このプロジェクトには、私も理事の一人として加わり、アラスカ先住民族の教育者やアラスカ各地の長老たちと緊密に協力して行われました。

このプロジェクトに最も重要な貢献をしてくれたのは、アラスカ先住民族の知識の担い手であるシシリア・マーツさんや、オールドミントという村に住むアサバスカン・インディアンの長老たちです。彼らは、何千年ものあいだ住み続けた土地に対する膨大な知識を身につけています。

地図をみると、いかにアラスカと日本が近いかお分かりかと思います。日本で地震が起きるとアラスカでもそれを感じるくらい近いです。このような自然の地形になっているので、その意味からも、日本とアラスカの人たちで、考えや様々な関心事項を交換できるといいと思います。

この地図でわかるように、アラスカには多くの文化・言語グループがあります。それぞれのグループはそれぞれの環境に適応してきました。沿岸の雨林地帯から北極圏のツンドラ地帯まで環境は様々です。そんな中でそれぞれの文化により適した教育システムを作るためには、その文化地域がもつ独自の世界観、価値観、伝統を考慮する必要がありました。

アラスカの少数民族ユピックの教育者とワークショップを一緒に開きませんか

子どもたちにプログラムを行う招聘者のシシリアさん(右)
子どもたちにプログラムを行う招聘者のシシリアさん(右)

エコプラスは、アラスカの少数民族ユピックの教育者シシリア・マーツさんを迎え、地域に根ざした教育についてのワークショップを、東京以外で共催していただける団体を公募中です。

NPO法人エコプラスは国際交流基金日米センターの助成を受け、「アラスカ先住民族の自然観を通して、地域に根ざした教育を考える日米市民プロジェクト」を実施します。プロジェクトに参画し、地域でワークショップを企画する団体を募集します。

1.事業の目的
日本は急速な近代化の結果、自国に存在する以上の多大なエネルギーを消費することでしか維持できない「発展」を手にし、地球全体の「持続可能性」が議論される今、これからの指針が模索されています。これからの社会を作って行くための教育も、見直しが必要です。

アラスカのユピック民族の伝統太鼓作り
アラスカのユピック民族の伝統太鼓作り

欧米の環境哲学・環境/野外教育の研究者らの間には、先住民族の世界観や自然とのつながりを学ぶことが環境問題の解決に重要な役割を果たすとの認識が広がってきています。一方で、アラスカ先住民族の自然観や文化は、日本の人々が古くから持ち続けてきた価値観と共通する要素が多々あります。
本プロジェクトでは、アラスカ先住民族の自然観や環境と調和した暮らしを維持する知恵などを市民レベルで共有しあうことを出発点に、それぞれの地域が他の地域に環境負荷を押し付けることなく共存していける地域社会づくりを目指した「地域学」とでも呼べる知的交流を目指します。
最終的には、地域の歴史・伝統・特性を知り、地域の持続的存続を構築できる次世代を育む「地域に根ざした教育」のあり方を、日米が協力し合って議論し続けるネットワークづくりへと発展させることを目的としています。

2.事業の概要
主催:特定非営利活動法人ECOPLUS
共催:損保ジャパン環境財団(東京講演会)
助成:独立行政法人国際交流基金日米センター
後援:社団法人日本環境教育フォーラム
社団法人日本キャンプ協会
日本環境教育学会
日本野外教育学会
招聘者:レイ・バーンハート氏(アラスカ大学教授)
※東京、塩沢のみ
シシリア・マーツ氏(ユピック民族教育家)
マイケル・マーツ氏
(ベセル放送局シニアプロデューサー)
招へい期間: 2006年11月23日〜12月5日
11月25〜26日
ワークショップ1:新潟県南魚沼市塩沢地区
11月27日
講演会:東京
11月29〜30日
ワークショップ2:公募により、開催
12月2日〜3日
ワークショップ3:公募により、開催

3.三地域でのワークショップ概要:
◇参加者:各地域で環境教育を行う指導者、関心をもつ住民ら約30人
◇ワークショップの内容:
1日目:先住民と教育についてのレクチャーおよび意見交換
アラスカの専門家より、理論の枠組みの提示と、それに基づく意見交換。
2日目:地域に根ざした教育のプログラム作り、課題の話しあい
全員で、開催地域の文化、伝統、食文化などを体験。その体験を素材として、地域に根ざした教育の具体的なプログラム作りをグループで行う。その可能性と課題を出し合い、対話を重ねる。参加者に応じてそれぞれのアクションプラン、プログラムデザインを実施。全員でシェアリング。意見交換。

4.東京講演会概要:
会場:損保ジャパン会議室(東京・新宿)
開催日:2006年11月27日 18:30-20:30
招へい者が講師となっての講演会。東京の一般市民、関心を持つ指導者らが対象。

5.ワークショップ開催地の公募について
これまで紹介されることが少なかった、アラスカ先住民の教育に対する考え方を知る機会を広く作るため、そして「地域に根差した教育」に関心ある人たちとのネットワークを広げるため、このプロジェクトでは、招聘された人たちを受け入れ、各地域でワークショップを開催する意志のある団体を二つ公募します。

興味のある方はぜひお申し込み、お問い合わせください。

■ゲスト:シシリア・マーツ氏(ユピック民族教育家)
マイケル・マーツ氏(ベセル放送局シニアプロデューサー

ゲストのシシリアさんはユピック民族の著名な「エルダー」です。英語をまったく理解しない4歳の時から、寄宿舎生活で学校に通い、ユピック語を知らないアメリカ人教師たちに「教育」されました。少数民族では初めての頃に教員免許を取り、教壇に立ちましたが、大学で教わった教育手法がユピックの文化や伝統と合わないことを無視できず、独自の教育方法を編み出して行きます。今では、文化やその土地に合った教育の推進者として、世界各地にスピーカーとして呼ばれています。

マイク・マーツさんは、アラスカのベセル放送局でシニアプロデューサーをしています。教師を務めた後、アラスカ先住民族の文化や伝統をとりあげたドキュメンタリー番組を多く手がけてきました。マイクさん自身は、「白人」のアメリカ人ですが、シシリアさんをパートナーとして支えています。
■ 受け入れのための経費
招聘した2名とアテンド1名の交通費や食費などの基本的な経費はプロジェクトでまかない、ワークショップ開催のために必要な費用の一部として5万円を提供します。

■ ワークショップの内容
当団体と相談しながら進めて行っていただければ幸いです。

■受け入れの条件
1)「地域に根ざした教育」に何らかの形で関わっている、取り組んでいること。
2)指定の日程のどちらかでワークショップを開催し、参加者を集めることができること。
3)互いに学びあう趣旨から、アラスカからの講師らにとって参考になるものを提供できること。
4)ワークショップでの成果をその後、活用できること。
5)今後「地域に根ざした教育」に関心を持つグループや個々人のネットワークに参加できること。
6)実施後の簡単な評価レポートや、報告書作成に文書を寄せるなどの協力ができること。

■選考基準
1)過去の実績・具体的な参加者像・ワークショップの広報手段など、確実にワークショップを実施できることを示す何らかの証拠があること。
2)成果が広範囲に影響を与えうる仕組みを有しているか、その可能性を持つ参加者(見込み)層であること。
3)アラスカ招へい者らの参考になり、これからのつながりも期待できるグループであること。
4)アラスカ先住民を筆頭とする講師らから学びたい意欲が十分に伝わること。ならびに相互に学びあい、理解しあう姿勢を持つこと。

■応募の仕方
以下の項目について記入し、メールにて下記までご応募ください。
info@ecoplus.jp

・ 団体情報(団体名、住所、電話、ファックス、メール、代表者名、規模、
過去の活動実績)
・ワークショップ開催を希望する理由
・ ワークショップの企画内容(概要)
・ ワークショップ見込み参加者(どんな人たちが何人くらい)
・ アラスカ先住民を筆頭とする講師らからどんなことを期待しているか

締め切りは7月7日(金)です。結果は7月15日までにご案内いたします。
【お問合せ先】
特定非営利活動法人エコプラス
〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町2-5-16 本門ビル4階
TEL: 03-5294-1441 FAX: 03-5294-1442
担当 村橋

雪の中、高野孝子講演会に60人以上が参加

地球儀を使って北極や南極を示しながら話す高野孝子。
地球儀を使って北極や南極を示しながら話す高野孝子。

高野孝子講演会が、2006年1月21日、東京都港区の施設「エコプラザ」で開かれ、これまでのプログラム参加者を含む多くの人と、地球各地のスライドを楽しみました。

高野孝子の講演会が、1月21日、東京都港区の環境教育施設「エコプラザ」で開かれた。エコプラザの活性化のために、17日から28日まで2週間開かれている写真展に合わせて、開催された。

写真展の会場をそのまま会場に使って、講演会が行われた。関東地方には珍しい雪の中、会場は立ち見がでるほどの盛況だった。
写真展の会場をそのまま会場に使って、講演会が行われた。関東地方には珍しい雪の中、会場は立ち見がでるほどの盛況だった。

当日は朝から雪となり、交通機関も混乱する中、会場には60人を超す人々が集まった。これまでのプログラム参加者やボランティアのみなさん、関係団体のスタッフら、エコプラスに関係する30人余の大人と4人の子どもも参加。旧知の顔を見つけてひさしぶりの会話もはずんだ。

講演では、高野が北極や南極、シベリアなどの極地で撮影した映像のほか、ミクロネシアなどでのスライドを上映しながら、美しい太平洋の島にもプラスチックゴミが流れ着き、汚染物質を排出する工場などが一切ない北極圏に、水銀などの有機化合物が降り注いでそこに住む少数民族の体に日本人をはるかに上回る有害物質の蓄積が起きていることなどを紹介。「海と空気で地球はみんなつながっている」と、それぞれの家庭や地域での行いが地球全体に影響を及ぼしていることを説明しました。

最後に、北極横断時に実際に使った寝袋を広げ、子どもたちに実際に中に入ってもらうと、全員が腰を上げて様子をのぞき込むなど、立体感に富んだ講演会となりました。

写真展は、1月28日まで。
会場に必ずスタッフがいるとは限りませんが、来場者ノートを備えておきますので、ご覧の際はぜひご感想をお残しください。
http://www.ecoclub.org/showart.php?lang=ja&genre=2&aid=262

英国のCenter for Alternative Technologyを見学してきました

センターでは、太陽光、水力、そして風力による自家発電ですべてのエネルギーをまかなっています。
センターでは、太陽光、水力、そして風力による自家発電ですべてのエネルギーをまかなっています。

世界でも有数の「エコセンター」とされる英国のCATを訪ねてきました。いろんな知恵が実際に試されている面白い場所でした。

愛知万博に関連したインタビューで、英国ウェールズにある「Center for Alternative Technology(これまでとは違った技術開発センター)」に行ってきました。持続可能性やこれからの地球社会のあり方に興味を持つ人にはすばらしい学びの要素が詰まった場所でした。機会があればぜひ訪ねることを勧めます。

以前に使っていた巨大な発電用の風車などを使った新しい展示コーナーが建設中です。
以前に使っていた巨大な発電用の風車などを使った新しい展示コーナーが建設中です。

CATは、最寄り駅であるMachynllech(マカンクラフ)の町から北に3マイル(約5キロ)慣れている。私は、自転車を電車に乗せて訪ねることにした。駅のインフォメーションセンターで町の中心部に行くように勧められて向かったが、町並みは駅の南側。再び北上して自転車ルート8号で進む。川沿いの放牧地に舗装された自転車道があり、それをたどって走る。川には魚がパシャと跳ねる音が何度も聞こえる。出来たばかりの自転車用の橋を渡って行くと、向かいの丘の上に巨大な発電用の風車が見える。
その丘に向かう急な坂を最低ギアにして登り、汗だくになって30分ほどかかって森の中に入ると、ようやくそこがセンターの受付だった。
受付からは、クリフレイルというケーブルカーが走っている。高低差70メートルのがけを往復する。下がってきたケーブルカーが着くと同時に、じゃーという水の音が鳴り渡る。つるべのように、二つのケーブルカーの片方に水を入れるとその重みで車が下がり、下につくとその水を吐き出して、上のケーブルカーに今度は水を入れる。その水の重みで次は上の車が下に下がってくる、という仕組みだ。まさに自然の力を使ったケーブルカーだ。

センターに上がると、インフォメーションセンターがあり、全体の説明を聞いたり、オーディオガイドの道具を借りることができる。

センターの歴史を示す10分のビデオ、エネルギーを無駄にしない家の作り方、断熱材として羊の毛やワラを使う壁が実際に作られている。家庭のゴミをどのように処理をするといいかも示されている。

センターの電力は、数百メートル離れたがけの上に置かれた3台の小さな風力発電機と池から流れる水を使った水力発電、それに屋根のあちこちに置かれた太陽光発電セルにより賄われており、その電力を蓄え供給するシステムもガラス越しに見ることができるようになっている。

センターには、スタッフの家族や長期滞在のボランティアが住み込んでおり、現実の生活に活用することができるさまざまな技術技法が生の形で示されているのが面白い。
トイレの手ふき紙もコンポストにされていてその経過を見ることが実際にできる。高さ1メートル近く積み上げられた紙くずが、厚さ10センチほどのたい肥になっている展示などで、さまざまな工夫の力を実感することが出来る。

センターのあちこちから風力発電の羽が回っているのが見えるので、自然エネルギーに目が行ってしまうが、主任農夫のロジャーと話をして分かった。このセンターの目に見えない主役は農業なのだ。人々の命を支える「食」を、ロジャーを筆頭とする農業グループが有機農業を通じて支えている。庭のあちこちに野菜が植えられ、「ロジャーのビニールハウス」と名付けられた場所では、トマトなどの野菜がいっぱい育てられている。このスタッフの3度の食事は無論、見学者向けのレストランの食材も全部自前で作っているのだ。

エコキャビンという18人を収容できる建物が2棟あり、学校などの団体を迎えることが出来るようになっている。屋根は土が置かれて植物が成長していて、断熱効果を上げている。宿泊者はどれだけの太陽エネルギーがキャビンに降り注いでいるのか、どれだけのゴミを自分たちが出しているのか、などを目のあたりにしながら生活を送り、日常生活の自然へのインパクトを学ぶことができるようになっている。

入場料は8ポンド、電車で行く時には事前にCAT入場券と一緒にというと入場料は半額になる。またバスや自転車でセンターに来たことを告げると入場券は割引になる。